マンション持ち家の相続で迷うのは当然のこと

親が住んでいたマンションを相続することになった場合、「住み続けるべきか」「売却するべきか」「賃貸に出すべきか」といった判断に迷う方は少なくありません。特に、自分自身がすでに持ち家を持っている場合や、相続したマンションが遠方にある場合は、より複雑な判断が必要になります。
この記事では、マンション持ち家の相続時に知っておきたい基本的な知識と、判断のポイントについて整理します。ただし、個別の物件や状況により判断は異なりますので、あくまで考え方の入口として参考にしてください。
- 相続時の基本的な手続きと期限
- マンション相続時の評価額の考え方
- 住み続ける・売却・賃貸の判断ポイント
- 相続税や譲渡所得税の基本的な仕組み
マンション相続時に必要な基本手続き
相続登記の義務化について
2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記を行う必要があります[1]。マンションを相続した場合も例外ではなく、この期限内に手続きを完了させなければなりません。
相続登記にかかる費用は、登録免許税として固定資産税評価額の0.4%が必要で、司法書士に依頼する場合は報酬も含めて1〜3万円程度の費用が発生します。
相続税の基礎知識
相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×法定相続人数」までは相続税がかかりません[1]。例えば、相続人が配偶者と子2人の計3人の場合、4,800万円までは相続税の対象外となります。
相続税の申告が必要な場合は、相続開始から10ヶ月以内に手続きを行う必要があります[1]。
マンション相続時の評価額について

相続税評価額の算定方法
マンションの相続税評価額は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて算定されます[2]。一般的に、市場価格よりも低く評価される傾向があり、これが不動産相続の特徴の一つです。
小規模宅地等の特例
被相続人が居住していたマンションの場合、一定の条件を満たせば小規模宅地等の特例が適用され、330㎡まで80%の評価減を受けることができます[1]。この特例により、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
| 特例の種類 | 対象面積 | 評価減率 | 主な適用条件 |
|---|---|---|---|
| 居住用宅地 | 330㎡まで | 80%減 | 被相続人の居住用、相続人が同居または家なき子等 |
| 事業用宅地 | 400㎡まで | 80%減 | 被相続人の事業用、相続人が事業を継続 |
相続したマンションの選択肢と判断ポイント
3つの主要な選択肢
相続したマンションについては、大きく分けて以下の3つの選択肢があります。
| 選択肢 | メリット | デメリット | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 住み続ける | ・住居費の削減・思い出の継承・資産の保有 | ・管理費・修繕積立金の負担・立地が不便な場合のデメリット | 現在の住居より条件が良い、転居に抵抗がない |
| 売却する | ・現金化できる・維持費の負担なし・管理の手間なし | ・売却時の諸費用・譲渡所得税の可能性・資産を失う | 現在の住居を維持したい、現金が必要 |
| 賃貸に出す | ・継続的な収入・資産の保有・将来の選択肢を残す | ・管理の手間・空室リスク・修繕費等の突発的支出 | 不動産投資に興味がある、将来住む可能性 |
判断時に考慮すべき要素
立地・物件条件
駅からの距離、周辺環境、築年数、管理状況などは、どの選択肢を取る場合でも重要な要素です。特に賃貸に出す場合は、賃貸需要の見込みを慎重に検討する必要があります。
維持費用の負担
マンションの管理費・修繕積立金は、全国平均で月額2〜3万円程度かかります。これに固定資産税や都市計画税も加わるため、年間の維持費用は決して小さくありません。
税務上の影響
売却する場合は譲渡所得税、賃貸に出す場合は不動産所得税の検討が必要です。特に、配偶者が相続する場合は配偶者控除(1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで非課税)[1]の活用も検討できます。
売却を選択する場合の基本知識

売却にかかる費用
マンションを売却する場合、以下の費用が発生します。
仲介手数料
売買価格400万円超の場合:売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税が法定上限です。例えば3,000万円で売却した場合、105.6万円が上限となります。
その他の主要費用
- 印紙税:売買契約書に貼付(契約金額により1,000円〜60,000円程度)
- 登記費用:抵当権抹消登記等(司法書士報酬含め1〜3万円程度)
- 住宅ローン一括返済手数料:金融機関により0〜33,000円程度
譲渡所得税について
売却により利益が出た場合は譲渡所得税がかかります。計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
税率は所有期間により異なり、売却した年の1月1日時点で判定されます。
| 所有期間 | 税率(復興特別所得税含む) | 内訳 |
|---|---|---|
| 5年以下(短期) | 39.63% | 所得税30.63% + 住民税9% |
| 5年超(長期) | 20.315% | 所得税15.315% + 住民税5% |
ただし、居住用財産であれば3,000万円の特別控除を利用できる場合があります。主な適用条件は以下の通りです。
- 居住用財産(マイホーム)であること
- 売却先が親族等の特殊関係者でないこと
- 前年・前々年にこの特例を受けていないこと
売却期間の現実
仲介での売却期間は一般的に3〜6ヶ月程度です。物件の立地や価格設定、市場動向により大きく変わるため、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
買取を選択した場合は最短1〜2週間程度で現金化できますが、売却価格は市場価格より低くなる傾向があります。
- 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
- 税制や法律は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。
査定を検討する場合の基本知識
- 査定方法の違い
当てはまるほど、売却を具体的に検討するタイミングかもしれません。
査定方法の違い
不動産の査定には主に以下の方法があります。
| 査定方法 | 特徴 | 精度 | 適用場面 |
|---|---|---|---|
| 机上査定 | 物件情報と周辺取引事例から算出 | やや低い | 複数社の見積もり比較 |
| 訪問査定 | 実際に物件を確認して算出 | 高い | 具体的な売却検討時 |
査定額はあくまで不動産会社の見積もりであり、実際の売却価格とは異なります。複数社に査定を依頼し、価格の根拠を比較検討することが重要です。
まとめ

マンション持ち家の相続では、相続登記の義務化への対応、相続税の基礎控除や特例の活用、そして住み続ける・売却・賃貸という選択肢の検討が必要です。
売却を選択する場合は、仲介手数料(売買価格×3%+6万円+消費税が上限)や譲渡所得税(所有期間5年超で20.315%、5年以下で39.63%)といった費用・税金の理解も重要になります。
ただし、物件や状況によって考え方は変わります。立地条件、築年数、管理状況、相続人の生活状況、税務上の個別事情など、様々な要素を総合的に判断する必要があります。
より具体的な比較検討の方法は、別の記事で詳しく解説しています。