相続した土地の放棄を検討する前に知っておきたい制度と判断軸

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況により最適な判断は異なります。必要に応じて公的情報や専門家へご確認ください。

この記事で分かること
  • 相続した土地を手放したいと思ったとき
  • 相続放棄の基本的な仕組み
  • 相続土地国庫帰属制度の基本的な仕組み

相続した土地を手放したいと思ったとき

相続した土地を手放したいと思ったとき

相続で土地を取得したものの、「遠方で管理できない」「固定資産税の負担が重い」「活用の見通しが立たない」といった理由で、土地を手放したいと考える方は少なくありません。

以前は「相続放棄」以外に土地を手放す公的な手段がありませんでしたが、2023年4月から相続土地国庫帰属制度が始まり、一定の要件を満たせば国に土地を引き取ってもらうことが可能になりました[1]

この記事では、相続した土地を手放す方法として「相続放棄」「相続土地国庫帰属制度」の基本的な仕組みと、どのような視点で判断すれば良いかを整理します。なお、個別の物件や状況により最適な判断は異なるため、具体的な手続きの前には専門家への確認が必要です。

相続放棄の基本的な仕組み

相続放棄とは

相続放棄とは、相続人が相続権を放棄し、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないことを家庭裁判所に申述する手続きです[1]

土地だけでなく、預貯金、株式、借金なども含めて全ての相続財産を放棄することになります。「土地だけ放棄して預貯金は相続する」といった部分的な放棄はできません。

相続放棄の期限と手続き

相続放棄の申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に対して行う必要があります。

手続きは以下の流れで進みます:

  • 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出
  • 必要書類:申述書、被相続人の住民票除票、申述人の戸籍謄本など
  • 収入印紙800円と連絡用の郵便切手が必要
  • 家庭裁判所から照会書が送付される場合がある
  • 申述が受理されると「相続放棄申述受理通知書」が交付される

相続放棄の注意点

相続放棄には以下の注意すべき点があります:

  • 撤回不可:一度受理されると取り消しはできません
  • 全財産が対象:土地以外の預貯金なども放棄することになります
  • 管理責任:放棄後も次の相続人が管理を始めるまでは管理責任が残る場合があります
  • 他の相続人への影響:放棄により他の相続人の相続分が増加します

相続土地国庫帰属制度の基本的な仕組み

相続土地国庫帰属制度の基本的な仕組み

制度の概要

相続土地国庫帰属制度は、相続により取得した土地を国庫に帰属させることができる制度で、2023年4月27日から施行されています[1]。所有者不明土地の発生を予防することを目的としています。

この制度では、土地のみを対象とし、建物がある場合は事前に除却する必要があります。また、相続放棄とは異なり、他の相続財産には影響しません

主な要件

国庫帰属が認められるためには、以下のような要件を満たす必要があります[1]

段階 主な要件
申請時 建物がない、担保権が設定されていない、境界が明確など
承認審査時 崖地でない、土壌汚染がない、管理費用が過大でないなど

具体的には、以下のような土地は対象外となります:

  • 建物がある土地
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 通路など他人による使用が予定される土地
  • 土壌汚染対策法上の特定有害物質により汚染されている土地
  • 崖がある土地で管理に過分の費用・労力を要する土地

費用

制度の利用には以下の費用が必要です[1]

  • 審査手数料:土地1筆当たり14,000円
  • 負担金:承認された場合、10年分の標準的な管理費用相当額(20万円が基本、面積や種目により算定)

2つの制度の比較と判断の視点

制度の特徴比較

項目 相続放棄 相続土地国庫帰属制度
対象財産 全ての相続財産 土地のみ
手続き時期 相続開始から3ヶ月以内 相続後いつでも可能
費用 800円程度 審査手数料14,000円+負担金20万円〜
要件 比較的緩やか 厳格(建物除却、境界明確化等)
他の財産への影響 全て放棄 影響なし

判断の視点

どちらの制度を選択するかは、以下の視点で整理できます:

相続放棄が適している場合

  • 借金などマイナスの財産が多い
  • プラスの財産があっても管理の負担を避けたい
  • 相続開始から3ヶ月以内で判断できる
  • 他の相続人の理解が得られる

相続土地国庫帰属制度が適している場合

  • 預貯金など他の相続財産は取得したい
  • 土地の要件を満たしている(建物なし、境界明確など)
  • 負担金(20万円程度〜)の支払いが可能
  • 時間をかけて準備できる

売却も検討すべき場合

制度の利用を検討する前に、売却の可能性も確認することが重要です:

  • 立地によっては買い手がつく可能性がある
  • 売却できれば費用負担なく手放せる
  • 不動産会社への査定依頼で市場価値を確認できる
前提・注意
  • 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
  • 税制や法律は変更される可能性があります。
  • 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。

まとめ

まとめ

相続した土地を手放す方法として、相続放棄と相続土地国庫帰属制度の2つの選択肢があります。

相続放棄は全ての相続財産を放棄する制度で、期限は3ヶ月以内、費用は800円程度と低額ですが、土地以外の財産も手放すことになります。

相続土地国庫帰属制度は土地のみを国に引き取ってもらう制度で、他の相続財産には影響しませんが、厳格な要件があり、費用も20万円程度〜と高額になります。

どちらを選択するかは、相続財産全体の状況、土地の状態、費用負担の可否、手続き可能な時期などを総合的に考慮する必要があります。また、制度の利用前に売却の可能性も検討することが重要です。

物件や状況によって考え方は変わります。より具体的な比較検討の方法は、別の記事で詳しく解説しています。