- 「固定資産税がかかっていない土地でも、売るときに税金はかかるの」
- 固定資産税がかからない土地とはどういう状態か
- 売却時にかかる税金の種類と計算の考え方
「固定資産税がかかっていない土地でも、売るときに税金はかかるの?」

毎年届く固定資産税の納税通知書が来ない、あるいはほとんど税額がゼロに近い土地を持っている方が、売却を検討するときに最初に感じる疑問はこれです。
固定資産税がかかっていないなら、売却のときも税負担は軽いのではないか。あるいは、そもそも何も手続きしなくていいのではないか。そう考えるのは自然なことですが、固定資産税の課税状況と、売却時にかかる税金はまったく別の制度です。
この記事では、固定資産税がかからない土地の仕組みを整理したうえで、実際に売却を進めるときに発生する費用・税金・手続きの基本的な考え方を解説します。物件の種類・立地・所有期間・取得経緯によって判断は大きく変わるため、ここでの情報はあくまで考え方の入口としてご活用ください。
- 固定資産税がかからない土地とはどういう状態か
- 売却時にかかる税金・費用の種類と計算の考え方
- 売却後の固定資産税の扱い
- よくある勘違いと注意点
個別の物件や状況により判断は異なります。税務・法務に関わる事項は、税理士や司法書士など専門家への確認を強くおすすめします。
固定資産税がかからない土地とはどういう状態か
固定資産税がかからない土地には、大きく分けて2つのパターンがあります。制度上の「非課税」に該当するケースと、課税標準額が一定額を下回る「免税点以下」のケースです。
非課税となる土地
地方税法第348条等の規定により、一定の用途に供されている土地は固定資産税が非課税とされています。具体的には、国・地方公共団体が所有・使用する土地、宗教法人が境内として使用する土地、公益法人が直接公益目的に使用する土地などが該当します。
一般の個人が所有する土地で非課税になるケースは多くありませんが、道路・水路として自治体に提供している土地や、特定の公益的用途に供している場合などが例外的に該当することがあります。
免税点以下の土地
固定資産税には「免税点」という制度があります。同一の市区町村内で所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満の場合、固定資産税は課税されません。
地方の山林・農地・原野など、評価額が低い土地ではこの免税点以下に該当することがあります。また、複数の土地を所有していても、合算した課税標準額が30万円を下回れば課税されません。
| パターン | 主な該当例 | 売却への影響 |
|---|---|---|
| 非課税(用途による) | 公益目的の利用、道路・水路として提供中の土地 | 売却自体は可能。売却後は用途が変わるため課税対象になる場合がある |
| 免税点以下(評価額が低い) | 地方の山林・農地・原野など | 売却時の税金は別途発生する。固定資産税の課税状況とは無関係 |
いずれのパターンでも、「固定資産税がかかっていない=売却時も税金がかからない」という理解は正確ではありません。売却時にかかる税金は、固定資産税とは異なる制度に基づいて計算されます。
売却時にかかる税金の種類と計算の考え方

土地を売却したときにかかる主な税金は、譲渡所得税・住民税・印紙税の3種類です。それぞれの仕組みを順に整理します。
譲渡所得税と住民税
土地の売却で利益(譲渡所得)が生じた場合、所得税と住民税が課税されます。計算の基本的な流れは以下のとおりです。
- 譲渡所得を計算する:売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
- 特別控除の適用可否を確認する
- 残った課税譲渡所得に税率をかける
取得費とは、土地を購入したときの費用(購入価格・仲介手数料・登記費用など)の合計です。譲渡費用とは、売却のためにかかった費用(仲介手数料・測量費・解体費用など)です。
税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって異なります。
| 所有期間の区分 | 所得税率(復興特別所得税含む) | 住民税率 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得(5年以下) | 30.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得(5年超) | 15.315% | 5% | 20.315% |
注意が必要なのは、所有期間の判定基準です。「実際に何年持っていたか」ではなく、売却した年の1月1日時点での所有期間で判定します。たとえば、2019年3月に取得した土地を2024年2月に売却した場合、2024年1月1日時点では所有期間が4年10ヶ月であるため、短期譲渡所得として扱われます。
取得費が不明な場合の扱い
相続や古い取得で購入価格がわからない場合、取得費を「売却価格の5%」とみなす概算取得費の制度があります。この場合、売却価格の95%が課税対象の譲渡所得となるため、税負担が大きくなる可能性があります。古い売買契約書や登記関係書類が残っていれば、実際の取得費を証明できる場合があるため、売却前に書類を確認しておくことが重要です。
特別控除制度について
居住用財産(マイホーム)の売却には、一定の条件を満たした場合に最大3,000万円の特別控除が適用される制度があります。ただし、この特例は原則として居住用財産(自分が住んでいた家・土地)が対象です。
固定資産税がかからない土地のうち、農地・山林・原野などの場合は、居住用財産には該当しないため、この3,000万円特別控除の適用は難しいケースが多いです。適用可否は個別の状況によって異なるため、税務署または税理士への確認が必要です。
主な適用条件の概要は以下のとおりです(詳細は税務署・税理士にご確認ください)。
- 居住用財産(マイホーム)であること
- 売却先が親族等の特殊関係者でないこと
- 前年・前々年にこの特例を受けていないこと
印紙税
土地の売買契約書には印紙税がかかります。金額は売買価格によって異なり、一般的な範囲では以下のとおりです。
| 売買価格 | 印紙税額(本則) | 軽減税率適用時(※) |
|---|---|---|
| 100万円超〜500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
※軽減税率は不動産売買契約書に適用される特例措置です。適用期間や条件は変更される場合があるため、国税庁の最新情報を確認してください。
確定申告の要否
土地を売却して譲渡所得が生じた場合、翌年の確定申告期間(原則として2月16日〜3月15日)に申告が必要です。売却損が生じた場合でも、他の所得との損益通算や繰越控除を利用する場合は申告が必要になることがあります。
給与所得者であっても、土地の売却収入がある場合は別途確定申告が必要です。申告漏れや期限後申告には加算税・延滞税が発生する可能性があるため、売却後のスケジュールに申告の準備期間を含めておくことが重要です。
売却にかかる費用の内訳と目安
税金とは別に、土地を売却する際にはさまざまな費用が発生します。代表的な費用の種類と目安を整理します。
仲介手数料
不動産会社を通じて売却する場合(仲介)、成功報酬として仲介手数料が発生します。法定の上限額は、売買価格400万円超の場合に売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税です。これはあくまで上限であり、実際の金額は不動産会社との交渉によって変わる場合もあります。
| 売却価格 | 仲介手数料の上限(税込) |
|---|---|
| 500万円 | 231,000円(21万円+消費税) |
| 1,000万円 | 396,000円(36万円+消費税) |
| 2,000万円 | 726,000円(66万円+消費税) |
| 3,000万円 | 1,056,000円(96万円+消費税) |
その他の主な費用
- 登記費用:抵当権抹消登記が必要な場合、登録免許税と司法書士報酬で1〜3万円程度
- 測量費用:境界が確定していない場合、確定測量が必要になることがある(数十万円〜)
- 解体費用:建物が残っている場合、更地渡しの条件で売却するときは解体費用が発生する(木造一般住宅で数十万〜100万円程度が目安)
- 住宅ローン一括返済手数料:土地にローンが残っている場合、金融機関により0〜33,000円程度
費用の合計は売却価格・物件の状況・取引条件によって大きく変わります。事前に複数の費用項目を洗い出し、手取り額をある程度把握してから売却価格の設定を検討することが重要です。
売却後の固定資産税はどうなるか

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に対して、その年の1年分が課税される仕組みです。つまり、年の途中で土地を売却しても、売却した年の固定資産税は1月1日時点の所有者(売主)に課税されます。
固定資産税の日割り精算
実務上は、売買契約の際に固定資産税を日割り計算して買主と精算するケースが一般的です。たとえば、7月1日に引渡しが完了した場合、前半(1月1日〜6月30日)分は売主負担、後半(7月1日〜12月31日)分は買主負担として精算することが多いです。
ただし、この精算は法律上の義務ではなく、売買契約の当事者間の合意に基づくものです。精算の有無・計算方法は契約書に明記されるため、売買契約の締結前に内容を確認しておくことが重要です。
免税点以下の土地を売却した場合
課税標準額が免税点以下で固定資産税がかかっていなかった土地でも、売却後に買主が他の土地と合算した場合に免税点を超えることがあります。この場合、買主に固定資産税が発生することになりますが、売主の手続きとは無関係です。
具体的なシナリオで考える:どんな場合に税負担が変わるか
土地の売却における税負担は、所有期間・取得費・売却価格・利用状況によって大きく変わります。2つの典型的なシナリオで考え方を整理します。
シナリオ1:地方の農地を相続してから売却するケース
地方の農地を親から相続し、固定資産税の課税通知が来ていなかった(免税点以下)ため、ほとんど維持費がかかっていなかったというケースを考えます。
相続後数年が経過し、管理が難しくなったため売却を検討したとします。売却価格が300万円、取得費が概算取得費(売却価格の5%=15万円)、仲介手数料が上限額の約15.6万円(税込)だとすると、譲渡所得の概算は以下のようになります。
- 売却価格:300万円
- 取得費(概算):15万円
- 譲渡費用(仲介手数料等):約16万円
- 譲渡所得:300万円 −(15万円 + 16万円)= 約269万円
所有期間が5年超であれば税率は20.315%となり、税額は約54万円程度の概算になります。固定資産税がかかっていなかった土地でも、売却益が生じれば相応の税負担が発生することがわかります。
実際の取得費(相続時の評価額・取得経緯)が証明できれば課税所得が変わる可能性があるため、相続関係の書類を確認しておくことが重要です。
シナリオ2:評価額が低い山林を売却するケース
評価額が低く免税点以下のため固定資産税が課税されていなかった山林を、隣地の所有者や林業関係者への売却を検討するケースを考えます。
このような土地は市場での買い手が限られるため、仲介での売却が難航することがあります。不動産会社が直接買い取る「買取」の場合、成約スピードは早い(最短2〜4週間程度)ものの、売却価格は市場価格の70〜80%程度になる傾向があります。
一方、仲介で売却できた場合は市場価格に近い金額を期待できますが、山林・農地などの特殊な土地は3〜6ヶ月を超える期間がかかることも少なくありません。売却を急ぐ理由がある場合と、時間をかけても高値を目指す場合とでは、選択肢の優先度が変わります。
また、農地の場合は農地法の規制により、売却先や手続きに制約がある点にも注意が必要です。農業委員会への届出・許可が必要なケースがあるため、事前に確認しておくことが重要です。
仲介と買取、どちらを選ぶかの考え方

固定資産税がかからないような評価額の低い土地は、売却方法の選択が特に重要です。仲介と買取の基本的な違いを整理します。
| 比較項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却価格の目安 | 市場価格に近い水準を期待できる | 市場価格の70〜80%程度が目安 |
| 売却期間の目安 | 3〜6ヶ月程度(物件・エリアにより大きく変動) | 最短1〜4週間程度 |
| 仲介手数料 | 発生する(売買価格×3%+6万円+消費税が上限) | 原則不要 |
| 契約不適合責任 | 売主が負う(一定期間) | 免責になることが多い |
| 向いているケース | 時間に余裕があり、できるだけ高く売りたい場合 | 早期売却が必要、または買い手が見つかりにくい土地 |
固定資産税がかからない土地は、評価額が低いか特殊な用途の土地であることが多く、一般の買い手が見つかりにくいケースもあります。仲介で売り出しても長期間売れない場合、買取という選択肢を改めて検討することになります。どちらが合理的かは、土地の立地・種類・売却を急ぐ理由によって変わります。
- 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
- 税制や法律は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。
よくある勘違いと注意点
固定資産税がかからない土地の売却では、いくつかの誤解が生じやすいです。判断を誤らないために、代表的な勘違いを整理します。
勘違い1:「固定資産税がかかっていないから、売っても税金はかからない」
固定資産税(保有中にかかる地方税)と、譲渡所得税(売却益にかかる国税・地方税)はまったく別の制度です。固定資産税の課税状況は、売却時の税負担には直接影響しません。評価額が低くても、取得費が低い場合は売却益が大きくなり、むしろ税負担が重くなることがあります。
勘違い2:「評価額が低い土地は売れない」
評価額が低い土地でも、隣地の所有者・農業関係者・林業関係者・太陽光発電事業者など、特定のニーズを持つ買い手が存在する場合があります。一般的な不動産仲介では買い手が見つかりにくくても、専門の仲介会社や買取業者を通じることで売却できるケースがあります。「評価額が低い=売れない」という思い込みで早期に諦めることなく、複数の選択肢を検討することが重要です。
勘違い3:「売却後はすぐに固定資産税の負担がなくなる」
固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるため、年の途中で売却しても、その年の固定資産税は売主に課税されます。売買契約で日割り精算する場合でも、税務上の義務者は1月1日時点の所有者です。売却後の固定資産税の扱いは、契約書の内容を事前に確認しておくことが重要です。
勘違い4:「査定価格が高い不動産会社に頼めばよい」
査定価格は「この価格で売れるだろう」という不動産会社の見積もりであり、実際の売却価格を保証するものではありません。極端に高い査定価格は、契約を獲得するための「高預かり」である可能性があります。査定価格の根拠(周辺の取引事例・価格設定の考え方)を確認し、複数社の査定を比較したうえで判断することが重要です。
売却の流れと手続きのステップ

土地の売却を進める際の一般的な手順を整理します。固定資産税がかからない土地であっても、基本的な流れは通常の土地売却と変わりません。
仲介での売却期間は一般的に3〜6ヶ月程度とされていますが、土地の立地・種類・価格設定・市場動向によって大きく変動します。特に評価額が低い土地や特殊な用途の土地では、より長い期間を見込んでおくことが現実的です。
媒介契約の種類と特徴
| 契約の種類 | 他社への依頼 | 自己発見取引 | レインズ登録義務 | 報告義務 |
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 不可 | 不可 | 5営業日以内 | 1週間に1回以上 |
| 専任媒介 | 不可 | 可 | 7営業日以内 | 2週間に1回以上 |
| 一般媒介 | 可 | 可 | 義務なし(任意) | 義務なし |
専任媒介・専属専任媒介は1社に集中してサポートを受けられる一方、一般媒介は複数社に依頼して競争を促せます。どちらが合理的かは、物件の特性や売主の状況によって変わります。
まとめ:固定資産税がかからない土地の売却で押さえておくべきポイント
固定資産税がかかっていない土地を売却する際に、最低限把握しておきたいポイントを整理します。
- 固定資産税がかからない理由は「非課税(用途による)」か「免税点以下(評価額が低い)」のいずれかであることが多い
- 固定資産税の課税状況と、売却時にかかる譲渡所得税はまったく別の制度
- 譲渡所得は「売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算し、所有期間5年超なら税率20.315%、5年以下なら39.63%が適用される
- 取得費が不明な場合は概算取得費(売却価格の5%)を使うことになり、税負担が重くなる可能性がある
- 売却後の固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるため、年の途中の売却では日割り精算を確認する
- 売却益が生じた場合は翌年の確定申告が必要
- 仲介と買取では売却価格・期間・手続きの負担が異なり、どちらが合理的かは物件の特性と売却理由による
ここから先は個別の事情で判断が分かれます。取得費の証明書類の有無・農地法などの法的規制・相続関係の手続きの有無など、固定資産税がかからない土地の売却には通常の土地売却とは異なる考慮事項が加わることがあります。
より具体的な比較検討の方法や、税金・費用のシミュレーションについては、別の記事で詳しく解説しています。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の物件・状況により判断は異なります。税務・法務に関わる事項は、税理士・司法書士・不動産の専門家にご確認ください。