相続した不動産の売却で気になる税金の負担

相続で取得した不動産の売却を検討する際、多くの方が「どのくらい税金がかかるのだろう」と不安に感じています。相続時にかかる相続税と、売却時にかかる譲渡所得税の両方を考慮する必要があり、制度も複雑に感じられるかもしれません。
この記事では、相続した不動産売却に関わる税金の基本的な仕組みと、負担を軽減する制度について整理します。ただし、個別の物件や相続状況により税額は大きく異なりますので、あくまで考え方の入口として参考にしてください。
- 相続した不動産に関わる税金の種類と基本的な仕組み
- 税負担を軽減する特例制度の概要
- 売却のタイミングを考える際の税務上のポイント
- 専門家への相談を検討すべき状況
相続した不動産に関わる税金の基本知識
相続時と売却時の2段階で税金が発生
相続した不動産には、異なるタイミングで2種類の税金が関わってきます。
| 税金の種類 | 課税タイミング | 課税対象 | 税率の目安 |
|---|---|---|---|
| 相続税 | 相続時 | 相続財産全体 | 10~55%(累進税率) |
| 譲渡所得税 | 売却時 | 売却益 | 20.315%または39.63% |
相続税の基本的な仕組み
相続税は、相続財産の総額が基礎控除額を超える場合に課税されます。[1]基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され、[1]相続開始から10か月以内に申告・納付する必要があります。
例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円となり、相続財産がこの金額以下であれば相続税は課税されません。
譲渡所得税の基本的な仕組み
不動産売却時には、売却益(譲渡所得)に対して所得税と住民税が課税されます。[1]税率は所有期間により異なり、5年超の長期譲渡所得は20.315%、5年以下の短期譲渡所得は39.63%となります。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却価格 – 取得費 – 譲渡費用
相続した不動産の場合、取得費は被相続人が購入した時の価格を引き継ぎます。購入価格が不明な場合は、売却価格の5%を取得費とする概算取得費を使用することもできます。
税負担を軽減する特例制度の考え方

相続税の取得費加算の特例
[2]相続税を支払った場合、その一部を不動産売却時の取得費に加算できる特例があります。これにより譲渡所得を圧縮し、譲渡所得税を軽減できる可能性があります。
この特例を適用するには、相続税の申告期限から3年以内に売却する必要があります。
居住用財産の3,000万円特別控除
[1]相続した不動産が被相続人の居住用だった場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。
主な適用条件は以下の通りです:
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
- 相続開始直前に被相続人以外に居住していた人がいないこと
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
- 売却価格が1億円以下であること
特例適用時の比較例
| 項目 | 特例なし | 3,000万円控除適用 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 5,000万円 | 5,000万円 |
| 取得費 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 譲渡費用 | 200万円 | 200万円 |
| 譲渡所得 | 3,800万円 | 800万円 |
| 税額(20.315%) | 約772万円 | 約163万円 |
- 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
- 税制や法律は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。
売却タイミングを考える際の税務上のポイント
- 相続から売却までの期間による影響
- 3年以内の売却を検討する場合
- 取得費加算の特例が適用できる可能性
- 空き家の3,000万円控除が適用できる可能性
- 相続税納付資金の確保という側面
当てはまるほど、売却を具体的に検討するタイミングかもしれません。
相続から売却までの期間による影響
相続した不動産の売却タイミングは、税務上いくつかの要素を考慮する必要があります。
3年以内の売却を検討する場合
- 取得費加算の特例が適用できる可能性
- 空き家の3,000万円控除が適用できる可能性
- 相続税納付資金の確保という側面
3年を超えて保有する場合
- 特例の適用期限が過ぎる可能性
- 維持管理費用の継続的な負担
- 不動産市況の変動リスク
複数の相続人がいる場合の考慮点
相続人が複数いる場合、以下の点を整理しておく必要があります:
- 遺産分割協議の完了タイミング
- 各相続人の税務上の状況
- 売却代金の分配方法
- 特例適用の可否と効果の確認
専門家への相談を検討すべき状況

税理士への相談が特に重要なケース
以下のような状況では、税理士など専門家への相談を検討することが大切です:
- 相続財産が基礎控除額を超えている場合
- 複数の特例制度の適用可能性がある場合
- 取得費が不明で概算取得費を使用する場合
- 相続人間での税負担に大きな差が生じる可能性がある場合
司法書士・行政書士との連携も重要
[3]相続登記の義務化により、相続した不動産の名義変更手続きも重要になっています。売却前の登記手続きについても、専門家に確認しておくことが大切です。
売却時の諸費用も考慮に入れる
売却にかかる主な費用
不動産売却時には税金以外にも様々な費用がかかります。主な費用の目安は以下の通りです:
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円+消費税 | 法定上限額 |
| 印紙税 | 1~6万円程度 | 売却価格により変動 |
| 登記費用 | 2~5万円程度 | 抵当権抹消等 |
| 測量費 | 30~80万円程度 | 土地の場合、必要に応じて |
これらの費用は譲渡費用として譲渡所得から控除できるため、税負担の軽減にもつながります。
まとめ

相続した不動産の売却では、相続税と譲渡所得税の2つの税金を考慮する必要があります。特に以下のポイントが重要です:
- 相続税の基礎控除額を超える場合は相続税の申告が必要
- 譲渡所得税は売却益に対して課税される
- 取得費加算の特例や3,000万円控除など、税負担を軽減する制度がある
- 適用期限がある特例制度に注意が必要
- [1]譲渡所得の確定申告は売却した年の翌年3月15日までに行う必要がある
ただし、物件や状況によって考え方は変わります。相続財産の規模、不動産の取得時期、相続人の状況などにより、最適な売却タイミングや適用できる特例制度は異なります。
より具体的な税額計算や特例適用の判断については、個別の状況を踏まえた専門家への相談をご検討ください。