- 「税金がかかるかどうか」が気になる方へ
- 譲渡所得税の基本的な仕組み
- 譲渡所得税がかからない主な3つのケース
「税金がかかるかどうか」が気になる方へ

不動産を売却しようと考えたとき、多くの方が最初に気になるのが「税金はいくらかかるのか」という点です。なかでも「売却益に税金がかかる」という話を聞いて、具体的にどのような仕組みなのか、自分のケースでは税金がかかるのかどうか、わからないまま不安を抱えている方は少なくありません。
結論から言うと、不動産売却で譲渡所得税がかからないケースは複数存在します。売却益がそもそも発生しない場合、あるいは一定の特例や控除を適用することで課税対象から外れる場合です。ただし、特例の多くは「申告しなければ適用されない」という点が重要で、税金がかからないからといって申告が不要とは限りません。
この記事では、譲渡所得税の基本的な仕組み、税金がかからない主なケース、申告の要否という3つの観点から、考え方の入口を整理します。個別の物件や状況によって判断は異なりますので、具体的な税額計算や申告手続きについては税務署や税理士にご確認ください。
譲渡所得税の基本的な仕組み
譲渡所得税とは、不動産を売却して利益(譲渡所得)が生じた場合に課される税金です。「売却価格が高ければ多くの場合税金がかかる」と思われがちですが、課税されるのはあくまで「利益が出た場合」であり、売却価格そのものに対してではありません。
譲渡所得の計算式
譲渡所得は、以下の計算式で求めます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費とは、その不動産を購入したときの価格(建物については減価償却後の金額)や、購入時に支払った仲介手数料・登記費用などを指します。譲渡費用とは、売却に直接かかった費用で、売却時の仲介手数料や印紙税などが該当します。
取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として使用できる場合があります。ただし、実際の取得費が5%を上回る場合は実額を使う方が有利になるケースもあるため、購入時の書類を確認することが重要です。
所有期間による税率の違い
譲渡所得が発生した場合、所有期間によって適用される税率が大きく異なります。ここでいう所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定される点に注意が必要です。
| 区分 | 所有期間の基準 | 税率(復興特別所得税含む) | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 売却年の1月1日時点で5年以下 | 39.63% | 所得税30.63%+住民税9% |
| 長期譲渡所得 | 売却年の1月1日時点で5年超 | 20.315% | 所得税15.315%+住民税5% |
たとえば、2019年3月に購入した物件を2024年6月に売却した場合、2024年1月1日時点での所有期間は約4年9ヶ月となり、5年以下に該当するため短期譲渡所得として扱われます。同じ物件でも2025年に売却すれば長期譲渡所得となり、税率が大幅に下がります。この違いは、売却のタイミングを検討する際に意識しておく価値のある観点です。
売却にかかる主な費用の内訳
譲渡費用に含まれるものを含め、不動産売却全体でかかる主な費用を整理しておきます。
| 費用項目 | 目安・計算方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売買価格×3%+6万円+消費税(上限) | 400万円超の場合の速算式。これは法定上限 |
| 印紙税 | 1,000円〜60,000円程度 | 売買契約書に貼付。契約金額により異なる |
| 抵当権抹消登記費用 | 1〜3万円程度 | 住宅ローン残債がある場合に必要 |
| 住宅ローン一括返済手数料 | 0〜33,000円程度 | 金融機関により異なる |
| ハウスクリーニング等 | 数万円程度(任意) | 売却活動の準備として行う場合 |
仲介手数料は「売買価格×3%+6万円+消費税」が法定上限であり、これを超えて請求することは認められていません。ただし、これはあくまで上限であり、実際の金額は個別の交渉や状況により異なる場合があります。
譲渡所得税がかからない主な3つのケース

- ケース1:売却しても利益が出ない(譲渡損失)
- ケース2:居住用財産の3,000万円特別控除の適用
- 売却する不動産が居住用財産(現に居住しているマイホーム、または居住しなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却するもの)であること
- 売却相手が配偶者・直系血族・生計を同一にする親族など特殊関係者でないこと
- 前年・前々年にこの特例を受けていないこと
当てはまるほど、売却を具体的に検討するタイミングかもしれません。
譲渡所得税がかからない状況には、大きく分けて「そもそも課税所得がゼロ以下になる場合」と「特例・控除の適用により課税対象から外れる場合」の2種類があります。以下に代表的なケースを整理します。
ケース1:売却しても利益が出ない(譲渡損失)
取得費と譲渡費用の合計が売却価格を上回る場合、譲渡所得はマイナス(譲渡損失)となり、課税対象が生じないため、基本的に譲渡所得税はかかりません。
たとえば、3,000万円で購入したマンションを2,500万円で売却し、仲介手数料などの譲渡費用が90万円かかった場合、譲渡所得は「2,500万円−(3,000万円+90万円)= −590万円」となり、課税所得はゼロです。
ただし、この場合でも申告によって損益通算や繰越控除の特例が適用できる可能性があります。損失が出たからといって申告を省略すると、こうした制度の恩恵を受けられない場合があるため、確認が必要です。
ケース2:居住用財産の3,000万円特別控除の適用
マイホーム(居住用財産)を売却した場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。これが「3,000万円特別控除」と呼ばれるものです。
たとえば、売却で4,000万円の譲渡所得が生じた場合でも、この控除を適用すると課税対象は「4,000万円−3,000万円=1,000万円」に圧縮されます。さらに、譲渡所得が3,000万円以下であれば、控除後の課税所得はゼロとなり、税負担がなくなります。
主な適用条件は以下のとおりです。
- 売却する不動産が居住用財産(現に居住しているマイホーム、または居住しなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却するもの)であること
- 売却相手が配偶者・直系血族・生計を同一にする親族など特殊関係者でないこと
- 前年・前々年にこの特例を受けていないこと
- その他、一定の要件を満たすこと
この控除は所有期間の長短を問わず適用できますが、適用を受けるためには確定申告が必要です。税金がかからない場合でも申告は必要となる点は、後述するセクションで改めて説明します。
ケース3:軽減税率の特例(長期譲渡所得の軽減)
居住用財産の売却で、所有期間が10年超の場合には、通常の長期譲渡所得税率(20.315%)よりもさらに低い軽減税率が適用される特例があります。
この特例では、課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に対して約14.21%(所得税10.21%+住民税4%)の税率が適用されます。3,000万円特別控除と組み合わせて利用することも可能です。
適用には確定申告が必要であり、要件の詳細は税務署や税理士に確認することが望まれます。
「申告が不要」と「税金がかからない」は別の話
特例適用には申告が必要なケース
3,000万円特別控除や軽減税率の特例は、確定申告をすることで初めて適用されます。申告をしなければ、控除や特例の恩恵を受けられず、本来かからなかったはずの税金が課されてしまう可能性があります。
確定申告の提出期限は、売却した年の翌年2月16日から3月15日までです。この期間を逃すと、原則として特例の適用ができなくなるため、スケジュールの把握が重要です。
申告が不要なケース
一方、以下のような場合は確定申告が不要とされています。
- 譲渡所得がゼロまたはマイナスで、かつ損益通算・繰越控除などの特例も利用しない場合
- 給与所得者で、不動産売却以外に申告すべき所得がなく、譲渡損失の特例も使わない場合
ただし、「申告が不要かどうか」の判断は個別の状況によって異なります。「税金がかからないから申告しなくていい」と自己判断する前に、税務署の窓口や税理士に確認しておくと選択肢が広がる場合があります。
損益通算・繰越控除の特例
居住用財産の売却で損失が出た場合、一定の要件を満たすと、その損失を他の所得(給与所得など)と通算できる「損益通算の特例」や、通算しきれなかった損失を翌年以降3年間にわたって繰り越せる「繰越控除の特例」が利用できる場合があります。
これらの特例は、確定申告をすることで適用されます。売却で損失が出た場合でも、申告によって所得税・住民税の負担が軽減される可能性があるため、損失が出たからといって申告を省略することは必ずしも得策ではなく、申告によって恩恵を受けられる可能性があります。
売却価格帯別:費用と税負担の目安

実際にどの程度の費用がかかるかを把握するために、売却価格帯ごとの仲介手数料の目安と、課税所得が発生した場合の税負担の概算を示します。あくまで参考値であり、実際の金額は物件の状況や取得費によって大きく異なります。
| 売却価格 | 仲介手数料の上限(税込) | 課税所得500万円の場合の税額(長期) | 3,000万円控除適用後の課税所得 |
|---|---|---|---|
| 2,000万円 | 約72.6万円 | 約101万円 | 0円(控除範囲内) |
| 3,000万円 | 約105.6万円 | 約101万円 | 0円(控除範囲内) |
| 5,000万円 | 約171.6万円 | 約101万円 | 0円(控除範囲内) |
| 8,000万円 | 約270.6万円 | 約101万円 | 0円(控除範囲内) |
※仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円+消費税10%」で計算。課税所得500万円の税額は長期譲渡所得税率20.315%で概算。3,000万円控除は居住用財産の要件を満たす場合に限ります。
この表からわかるように、居住用財産で譲渡所得が3,000万円以内に収まるケースでは、特別控除の適用によって課税所得がゼロになる可能性があります。ただし、控除の適用には申告が必要であり、要件を満たしているかの確認も欠かせません。
具体的なシナリオで考える:どのケースに当てはまるか
シナリオA:購入価格より安く売却するケース
築15年のマンションを2,800万円で購入し、10年後に2,200万円で売却したケースを考えます。仲介手数料などの譲渡費用が約80万円かかったとすると、譲渡所得は「2,200万円−(2,800万円+80万円)= −680万円」となり、損失が発生しています。
この場合、譲渡所得税はかかりません。ただし、居住用財産の売却で損失が出た場合の損益通算・繰越控除の特例を利用できる可能性があります。住宅ローンが残っている場合、一定の要件を満たすと損失を給与所得などと通算できる制度があるため、申告によって所得税・住民税の還付が見込めるケースもあります。
「損失が出たから申告しなくていい」と判断する前に、この特例の適用可否を確認することが、結果的に手取り額に影響する場合があります。
シナリオB:長期居住のマイホームを売却するケース
20年前に2,500万円で購入した一戸建てを、4,500万円で売却するケースを考えます。建物の減価償却を考慮した取得費を1,800万円、譲渡費用を150万円とすると、譲渡所得は「4,500万円−(1,800万円+150万円)= 2,550万円」です。
所有期間は20年超で長期譲渡所得に該当し、税率は20.315%です。控除なしで計算すると税額は約518万円になります。しかし、居住用財産の3,000万円特別控除を適用すると、課税対象の譲渡所得は「2,550万円−3,000万円= −450万円」となり、課税所得はゼロになります。
この場合、税金はかかりませんが、特別控除の適用を受けるためには確定申告が必要です。申告を忘れると、約518万円の税負担が生じる可能性があります。「税金がかからない=申告不要」という誤解が、実際の損失につながるケースの典型例です。
- 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
- 税制や法律は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。
売却の流れと税務手続きの位置づけ

不動産売却全体の流れの中で、税務手続きがどの段階に位置するかを把握しておくことも重要です。以下に一般的な流れを示します。
税務手続きは売却後の作業ですが、特例の適用要件や申告の準備は売却前から意識しておく必要があります。たとえば、居住用財産の要件(居住しなくなった日から3年を経過する年の12月31日まで)は、売却のタイミングに直接関わります。
仲介での売却期間は一般的に3〜6ヶ月程度ですが、物件の立地や価格設定、市場動向により大きく変わります。余裕を持ったスケジュールで進めることが、税務面での判断にも余裕をもたらします。
- 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
- 税制や法律は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。
媒介契約の種類と選び方の基本
媒介契約の種類と税務手続きへの関連
不動産会社と結ぶ媒介契約の種類によって、販売活動の進め方や情報の取り扱いが異なります。売却にかかる期間や成立のタイミングは、譲渡所得税の計算基準となる「譲渡日(引渡日)」にも影響するため、税務手続きを正確に進めるうえでも基本知識として整理しておきます。
| 契約の種類 | 複数社への依頼 | 自己発見取引 | レインズ登録義務 | 報告義務 |
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 不可 | 不可 | 5営業日以内 | 1週間に1回以上 |
| 専任媒介 | 不可 | 可 | 7営業日以内 | 2週間に1回以上 |
| 一般媒介 | 可 | 可 | 任意 | 任意 |
専任媒介は1社に絞ることで手厚いサポートが期待できる一方、一般媒介は複数社が競争することで買い手を広く探せる可能性があります。どちらが適しているかは物件の特性や売主の状況によって異なり、一概にどちらが良いとは言えません。いずれも契約期間の上限は3ヶ月です。
よくある誤解と注意点

誤解1:「税金がかからないなら申告しなくていい」
前述のとおり、3,000万円特別控除や損益通算・繰越控除の特例は、確定申告をすることで初めて適用されます。「税金がかからないから申告は不要」と判断してしまうと、本来受けられるはずの控除が適用されず、思わぬ税負担が生じる可能性があります。
また、損失が出た場合の繰越控除を利用するためには、損失が出た年から連続して申告を続ける必要があります。1年でも申告を怠ると、繰越控除の権利が失われます。
誤解2:「購入価格より安く売れば多くの場合税金はかからない」
購入価格より安く売却しても、取得費の計算方法によっては課税所得が発生する場合があります。特に、建物部分は減価償却によって取得費が目減りするため、購入価格そのものではなく「減価償却後の取得費」で計算する必要があります。
たとえば、購入価格が3,000万円でも、建物部分の減価償却が進んでいると実質的な取得費が2,000万円程度になることがあります。その場合、2,500万円での売却でも課税所得が発生する可能性があります。
誤解3:「所有期間が長ければ長いほど税率が下がり続ける」
所有期間による税率の区分は「5年以下(短期)」と「5年超(長期)」の2段階です。長期譲渡所得の場合、居住用財産で所有期間10年超の軽減税率の特例が別途ありますが、それ以上に所有期間が長くなっても税率がさらに下がる仕組みにはなっていません。
「20年持ち続ければもっと税率が下がる」という誤解は根強くありますが、税率の観点では10年超の特例が適用される時点で一定の節目を迎えます。
仲介と買取:手取り額への影響
売却方法の選択も、最終的な手取り額に影響します。仲介と買取の基本的な違いを整理しておきます。
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却価格の目安 | 市場価格に近い水準 | 市場価格の70〜80%程度 |
| 売却期間 | 3〜6ヶ月程度 | 最短1〜2週間程度 |
| 仲介手数料 | 発生する(上限:売買価格×3%+6万円+消費税) | 原則不要 |
| 契約不適合責任 | 売主が負う場合がある | 免責になることが多い |
| 内覧対応 | 必要 | 不要 |
仲介は市場価格に近い金額での売却が期待できる反面、3〜6ヶ月の期間と内覧対応が必要になります。買取は最短1〜2週間で完了しますが、手取り額は市場価格の70〜80%程度に下がる傾向があります。
税務面では、どちらの方法で売却しても譲渡所得の計算方法は同じです。ただし、売却価格が変わることで課税所得の額が変わり、3,000万円特別控除の適用可否や税額に影響することがあります。売却方法の選択は、税負担の観点からも検討の余地があります。
査定の種類と価格の考え方

売却を検討する際、まず不動産会社に査定を依頼することが一般的です。査定には大きく2つの方法があります。
- 机上査定(簡易査定):物件情報と周辺の取引事例から概算を算出。数時間〜翌日程度で結果が出る。精度はやや低いが、複数社の見積もりを手軽に比較できる
- 訪問査定(詳細査定):不動産会社が実際に物件を確認して算出。1〜2週間程度かかるが、精度が高い
査定価格はあくまで「この価格で売れるだろう」という予測であり、実際の売却価格を保証するものではありません。複数社に査定を依頼し、価格の根拠を比較検討することが重要です。
また、査定価格が高い会社が必ずしも良い会社とは限りません。契約を取るために意図的に高い価格を提示し、後から値下げを求めてくる「高預かり」と呼ばれる慣行が存在することも知っておく価値があります。査定価格の根拠(どのような取引事例を参照したか)を確認することが、適切な判断につながります。
まとめ:譲渡所得税と申告の考え方
不動産売却における譲渡所得税の基本的な考え方を整理すると、以下のポイントが重要です。
- 課税されるのは「利益(譲渡所得)」に対してであり、売却価格そのものではない
- 所有期間が売却年の1月1日時点で5年超か以下かで税率が大きく異なる(長期:20.315%、短期:39.63%)
- 居住用財産の売却では3,000万円特別控除の適用により、課税所得がゼロになるケースがある
- 特例・控除の適用には確定申告が必要であり、申告期限は翌年2月16日〜3月15日
- 損失が出た場合も、損益通算・繰越控除の特例を活用できる可能性がある
- 「税金がかからない=申告不要」とは限らない
物件や状況によって考え方は変わります。特に取得費の計算方法、所有期間の判定、特例の適用要件は個別の事情によって異なるため、具体的な税額計算や申告の判断については、税務署や税理士にご確認ください。
より具体的な比較検討の方法や、売却を進める際の各ステップの詳細については、別の記事で詳しく解説しています。
※本記事の情報は一般的な知識の整理を目的としており、個別の物件や状況により判断は異なります。税務・法的な判断については、専門家(税理士・税務署・弁護士等)にご相談ください。