- 古家が残ったまま土地を売るとき、解体費用はどう扱われるのか
- 「古家付き土地」とは何か——基本的な定義
- 解体費用の負担は誰が決めるのか——法律上の原則
古家が残ったまま土地を売るとき、解体費用はどう扱われるのか

古家が建ったままの土地を売ろうとしたとき、多くの人が最初にぶつかる疑問が「解体費用は誰が負担するのか」という問題です。売主が全額払うのが当然なのか、買主との交渉次第で変わるのか、あるいは売却価格に折り込む方法があるのか——状況によって答えが異なるため、一概に「こうすれば正解」とは言えません。
この記事では、古家付き土地の売却における解体費用の負担の考え方を整理します。法律上の原則から、実際の取引で使われる方法の違い、税務上の取り扱い、よくある勘違いまでを順を追って説明します。個別の物件や状況により判断は異なりますが、まず「どういう選択肢があるか」を把握することが、次のステップへの足がかりになります。
「古家付き土地」とは何か——基本的な定義を確認する
古家付き土地とは、建物が建ったままの状態で売り出される土地のことです。建物自体の価値がほぼゼロ(あるいはマイナス)と評価され、土地の価格のみで取引されるケースが大半を占めます。
「古家付き」と「中古住宅」は似ているようで、不動産取引上の扱いが異なります。中古住宅は建物に一定の価値が認められ、建物価格+土地価格で売買されます。一方、古家付き土地は建物の価値を事実上ゼロとして、土地価格のみで売買されるのが一般的です。
| 区分 | 建物の扱い | 価格の構成 | 主な買主像 |
|---|---|---|---|
| 中古住宅 | 価値あり(居住可能) | 土地+建物 | 居住目的の個人 |
| 古家付き土地 | 価値ほぼゼロ(解体前提) | 土地のみ(建物は除外) | 建て替え・開発目的の個人・業者 |
| 更地 | 建物なし | 土地のみ | 幅広い買主 |
古家付き土地として売り出す場合、買主は「解体して新たに建物を建てる」か「土地をそのまま利用する」ことを前提としています。そのため、解体費用の扱いが取引の重要な論点になります。
解体費用の負担は誰が決めるのか——法律上の原則

結論から言うと、解体費用の負担者は法律によって一律に決まっているわけではなく、売主と買主の合意によって決まります。民法上、不動産売買は当事者間の契約によって成立するため、「誰が解体費用を払うか」は売買契約書の内容次第です。
実務上は、売買契約書に「更地渡し」または「現状渡し(古家付き)」という条件を明記することで、解体費用の負担関係を明確にします。この記載がない場合、後からトラブルになるリスクがあるため、契約書の条件確認は欠かせません。
「更地渡し」と「現状渡し」の違い
| 条件 | 解体の実施者 | 解体費用の負担 | 引渡し時の状態 |
|---|---|---|---|
| 更地渡し | 売主 | 売主が負担 | 建物を解体した更地 |
| 現状渡し(古家付き) | 買主(引渡し後) | 買主が負担 | 古家が残ったまま |
| 解体費用を売却価格に反映 | 売主(または買主) | 実質的に売主が負担(値引きで調整) | 契約内容による |
どちらの条件を選ぶかは、売主・買主双方の事情と交渉によって決まります。「更地渡しが売主にとって損」とも「現状渡しが買主にとって有利」とも一概には言えず、売却価格全体のバランスの中で判断されます。
解体費用の相場はどれくらいか
解体費用の負担を考えるうえで、まず費用の規模感を把握しておくことが重要です。解体費用は建物の構造・延床面積・立地条件・廃材の処理費用などによって大きく異なります。
構造別の解体費用の目安(1坪あたり)
| 構造 | 1坪あたりの目安 | 30坪の建物の概算 |
|---|---|---|
| 木造(W造) | 3〜5万円程度 | 90〜150万円程度 |
| 鉄骨造(S造) | 5〜7万円程度 | 150〜210万円程度 |
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 6〜8万円程度 | 180〜240万円程度 |
上記はあくまで目安であり、実際の費用は現地の状況や施工業者によって変動します。全国平均では木造住宅1棟あたり100〜200万円程度とされることが多いですが、地域差も大きく、都市部では廃材処理コストが高くなる傾向があります。
アスベスト(石綿)が含まれる場合は追加費用が発生する
1975年以前に建てられた建物や、一部の建材にはアスベスト(石綿)が含まれている場合があります。大気汚染防止法の改正により、解体工事前にアスベストの事前調査が義務付けられており、アスベストが検出された場合は専門業者による除去作業が必要です。除去費用は数十万円から場合によっては数百万円に上ることもあり、解体費用の見積もりを取る際には多くの場合確認が必要です。
売主が解体する場合と現状渡しの場合——それぞれの考え方

解体費用の負担方法には大きく3つのパターンがあります。それぞれにメリットとデメリットがあり、どれが合理的かは売主の状況・物件の条件・買主の属性によって変わります。
パターン①:売主が解体して更地で売る
売主が事前に解体工事を行い、更地の状態で売り出す方法です。更地になることで買主の裾野が広がり、住宅ローンを使った個人の買主も対象になります。古家付きの状態では住宅ローンの担保評価が難しいケースがあるため、更地にすることで買主候補が増える可能性があります。
一方で、売主が先に解体費用を支払う必要があり、資金負担が発生します。また、更地にすると固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が大幅に上がる点も注意が必要です(後述)。
パターン②:古家付きのまま現状渡しで売る
解体せずに古家が残ったまま売り出し、解体は買主が行う方法です。売主は解体費用を負担しない代わりに、売却価格が更地よりも低くなるのが一般的です。買主は解体費用を見込んだうえで購入価格を決めるため、「古家付き土地の価格=更地価格−解体費用(±交渉幅)」という構造になります。
この方法は売主の初期支出を抑えられますが、買主が限定される(解体費用を自己負担できる資金力のある買主に絞られる)というデメリットがあります。
パターン③:売却価格に解体費用を反映させて交渉する
現状渡しを前提としつつ、解体費用相当額を売却価格から差し引く形で交渉するケースです。たとえば「更地なら3,000万円の土地だが、解体費用が150万円かかるため、古家付きで2,850万円」という価格設定が典型的です。
この方法は売主・買主ともに費用の実態が見えやすく、交渉がしやすいという利点があります。ただし、実際の解体費用は見積もりを取るまで確定しないため、複数の業者から事前見積もりを取っておくと交渉の根拠になります。
具体的なシナリオで考える——どちらの方法が合理的か
シナリオA:築40年の木造一戸建て、地方都市の住宅地
延床面積30坪、木造の古家が残る土地(約50坪)を相続で取得したケースを考えます。相続後の固定資産税や管理コストを抑えたいため、早期売却を希望しています。
この状況では、更地にして売り出すか、現状渡しで売り出すかの判断が分かれます。木造30坪の解体費用は90〜150万円程度が目安です。地方都市では買主の資金力にばらつきがあり、古家付きのままでは購入できる買主が限られる可能性があります。一方、更地にすることで住宅ローンを使った個人の買主も対象になり、買主の選択肢が広がります。
ただし、売り出しから売却完了まで仲介の場合は3〜6ヶ月程度かかるのが一般的であり、更地にした後に売れ残ると固定資産税の増額(後述)が続くリスクもあります。解体のタイミングは「売買契約後、引渡し前」とする特約を設けることで、このリスクを軽減できる場合があります。
シナリオB:築30年の軽量鉄骨造、都市近郊の人気エリア
都市近郊の需要が高いエリアで、軽量鉄骨造(延床面積35坪)の古家が建つ土地(約60坪)を売却するケースです。エリアの人気が高く、土地の需要は旺盛です。
このような条件では、古家付きのままでも買い手がつきやすく、現状渡しで売り出すことも現実的な選択肢になります。鉄骨造の解体費用は1坪あたり5〜7万円程度が目安のため、35坪では175〜245万円程度の費用が見込まれます。この金額を売却価格から差し引いた形で価格設定し、交渉することで、売主は解体費用の支出なく売却を完了できる可能性があります。
ただし、買主が不動産業者(建売業者など)の場合、解体費用の見積もりを独自に取り、それを根拠に値引き交渉を行うことが多いため、売主側も事前に解体費用の概算を把握しておくことが交渉の助けになります。
固定資産税への影響——更地にするタイミングに注意が必要

解体を検討する際に見落とされがちなのが、固定資産税への影響です。住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」により、固定資産税が軽減されています。具体的には、小規模住宅用地(200㎡以下の部分)は課税標準が6分の1に、一般住宅用地(200㎡超の部分)は3分の1に軽減されます[1]。
建物を解体して更地にすると、この特例が適用されなくなるため、固定資産税が最大6倍程度に増加する可能性があります[1]。たとえば、住宅用地として年間10万円の固定資産税だった土地が、更地になることで年間60万円程度になるケースも考えられます。
このため、解体のタイミングは慎重に考える必要があります。売買契約が成立した後、引渡し前に解体する「契約後解体」という方法を取ることで、更地状態での固定資産税増額期間を最小限に抑えることができます。
解体費用の資金調達——補助金やローンの活用
解体費用は数十万〜数百万円に上ることもあり、まとまった資金が必要です。資金調達の手段として、以下のような選択肢があります[1]。
自治体の解体費用補助金
老朽化した建物や空き家の解体を促進するため、自治体によっては解体費用の一部を補助する制度を設けているところがあります[1]。補助額は自治体によって異なり、数十万円程度の補助が受けられる場合もあります。ただし、補助の対象条件(空き家であること、一定の老朽度基準を満たすことなど)や申請時期に制限があるため、事前に各自治体の窓口に確認することが必要です[1]。
解体ローン(リフォームローン等)の活用
一部の金融機関では、解体工事費用を対象としたローン商品を提供しています[1]。住宅ローンとは別に、リフォームローンや解体専用のローンを利用できる場合があります。ただし、金利や審査条件は金融機関によって異なるため、複数の金融機関の条件を比較することが重要です[1]。
解体費用と税務の関係——取得費・譲渡費用への算入

売主が解体費用を負担した場合、その費用が税務上どう扱われるかは重要な論点です。不動産売却時の譲渡所得は以下の計算式で求められます。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
解体費用は、一般的に「譲渡費用」として譲渡所得の計算に含めることができるとされています[1]。譲渡費用に算入できれば、課税対象となる譲渡所得が減少するため、税負担の軽減につながる可能性があります[1]。
ただし、解体費用の算入が認められる条件(売却のために解体したことが明確であることなど)や、取得費との区別については、税務署や税理士に確認することが必要です[1]。個別の状況によって判断が異なるため、一般論として「多くの場合算入できる」とは言い切れません。
譲渡所得税の税率
譲渡所得が発生した場合、以下の税率が適用されます。
| 所有期間の区分 | 判定基準 | 税率(復興特別所得税含む) |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で所有期間5年以下 | 39.63%(所得税30.63%+住民税9%) |
| 長期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で所有期間5年超 | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) |
所有期間の判定は「実際の取得日から売却日まで」ではなく、「売却した年の1月1日時点での所有期間」で行う点に注意が必要です。また、居住用財産(マイホーム)として使用していた場合は、一定の条件を満たすと最大3,000万円の特別控除が適用される場合があります。適用条件の詳細は税務署や税理士に確認してください。
売却にかかる費用の全体像を把握する
古家付き土地の売却では、解体費用以外にもさまざまな費用が発生します。全体像を把握しておくことで、手取り額の見通しが立てやすくなります。
主な費用項目と目安
| 費用項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 解体費用 | 90〜240万円程度(構造・規模による) | 更地渡しの場合に発生 |
| 仲介手数料 | 売買価格×3%+6万円+消費税(上限) | 法定上限。交渉の余地がある場合も |
| 印紙税 | 1,000〜60,000円程度 | 売買契約書の契約金額による |
| 抵当権抹消費用 | 1〜3万円程度 | 住宅ローン残債がある場合 |
| 住宅ローン一括返済手数料 | 0〜33,000円程度 | 金融機関による |
| 譲渡所得税 | 売却益×20.315%または39.63% | 売却益が出た場合に発生 |
仲介手数料は「売買価格×3%+6万円+消費税」が法定上限であり、これを上回る請求は認められていません。ただし、この計算式はあくまで上限であり、実際の金額は売買価格によって異なります。
売却価格帯別の仲介手数料の目安
| 売却価格 | 仲介手数料の上限(税込) |
|---|---|
| 1,000万円 | 約39.6万円 |
| 2,000万円 | 約72.6万円 |
| 3,000万円 | 約105.6万円 |
| 5,000万円 | 約171.6万円 |
仲介と買取——古家付き土地ではどちらが現実的か

古家付き土地を売却する際、仲介と買取のどちらを選ぶかも重要な判断ポイントです。
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却価格の目安 | 市場価格に近い水準 | 市場価格の70〜80%程度 |
| 売却期間 | 3〜6ヶ月程度(物件・エリアによる) | 最短1〜4週間程度 |
| 仲介手数料 | 発生する(上限:売買価格×3%+6万円+消費税) | 原則不要 |
| 契約不適合責任 | 売主が負う場合が多い | 免責になることが多い |
| 解体費用の扱い | 売主・買主で交渉 | 買取業者が解体を前提に価格設定 |
買取の場合、不動産会社が解体費用を見込んだうえで買取価格を提示するため、売主は解体費用を別途負担しないケースが多いです。ただし、その分売却価格は低くなります。「早期に現金化したい」「解体費用の手当てが難しい」という場合には、買取も現実的な選択肢の一つです。
媒介契約の種類と古家付き土地への影響
仲介で売却する場合、不動産会社との媒介契約の種類を選ぶ必要があります。古家付き土地の場合、買主を見つけるまでに時間がかかる可能性があるため、媒介契約の種類が売却活動の進め方に影響します。
| 契約の種類 | 複数社への依頼 | 自己発見取引 | 報告義務 | レインズ登録 |
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 不可 | 不可 | 週1回以上 | 5営業日以内 |
| 専任媒介 | 不可 | 可 | 2週間に1回以上 | 7営業日以内 |
| 一般媒介 | 可 | 可 | 義務なし | 任意 |
専任媒介・専属専任媒介は1社に集中してサポートを受けられる一方、一般媒介は複数社に依頼することで幅広い販売活動が期待できます。古家付き土地は需要が限定されやすいため、積極的な販売活動を期待するなら専任系の契約で手厚いサポートを求める方法も考えられます。ただし、どちらが適切かは物件の特性や売主の状況によって異なります。いずれの契約も期間は最長3ヶ月(更新可)です。
- 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
- 税制や法律は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。
よくある勘違いと注意点

勘違い①:「更地にすれば多くの場合高く売れる」とは限らない
更地にすることで買主の幅が広がるのは事実ですが、解体費用を支出した分だけ手取り額が増えるとは限りません。解体費用が150万円かかっても、売却価格が150万円上がるとは限らず、場合によっては解体費用の方が高くつくこともあります。更地にする前に、「更地の想定売却価格−解体費用」と「古家付きの売却価格」を比較する視点が重要です。
勘違い②:「査定価格が高い会社が良い会社」とは言えない
複数の不動産会社に査定を依頼した際、極端に高い査定価格を提示する会社がある場合、それは「契約を取るための高預かり」の可能性があります。高い価格で売り出した後、売れ残りが続いて値下げを繰り返すケースも少なくありません。査定価格の根拠(周辺の取引事例・価格設定の理由)を確認し、現実的な売却見通しを持つ会社かどうかを見極めることが大切です。
勘違い③:「解体費用は全額売主負担が当然」ではない
解体費用の負担者は法律で決まっているわけではなく、売主・買主の交渉によって決まります。現状渡し(古家付き)で売却すれば、解体費用は買主が負担することになります。「解体しなければ売れない」と思い込んで急いで解体すると、不要な費用を負担することになる場合もあります。まず売却の選択肢全体を整理してから、解体の要否を判断することが重要です。
売却の流れ——古家付き土地の場合のステップ
古家付き土地の売却は、一般的な不動産売却の流れに加えて、解体に関する判断が加わります。以下のステップで進めることが一般的です。
売り出しから成約まで仲介の場合は3〜6ヶ月程度が一般的ですが、物件の立地・価格設定・市場状況により大きく変動します。余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
まとめ——古家付き土地の解体費用は「交渉で決まる」が基本

古家付き土地の解体費用の負担者は、法律によって一律に定められているわけではなく、売主と買主の合意によって決まります。更地渡しにするか現状渡しにするかは、解体費用の規模・固定資産税への影響・買主の属性・売却価格全体のバランスを踏まえて判断することが重要です。
解体費用は構造・規模によって90〜240万円程度と幅があり、アスベストが含まれる場合はさらに費用が増加する可能性があります。自治体の補助金制度の有無も事前に確認する価値があります。また、解体費用を売主が負担した場合は、譲渡所得の計算において譲渡費用として算入できる可能性がありますが、個別の条件については税務署や税理士への確認が必要です。
物件や状況によって考え方は変わります。「更地にすれば多くの場合有利」でも「現状渡しが損」でもなく、それぞれのトレードオフを理解したうえで判断することが大切です。
より具体的な比較検討の方法や、売却価格の査定の進め方については、別の記事で詳しく解説しています。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の物件や状況により判断は異なります。税務・法律に関する具体的な判断は、税理士・司法書士・不動産の専門家にご相談ください。