- 不動産の査定に費用はかかるのか、まず確認しておきたいこと
- 査定の種類と費用の関係
- 不動産売却にかかる費用の全体像
- 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
- 税制や法律は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。
不動産の査定に費用はかかるのか、まず確認しておきたいこと

不動産を売ろうと考えたとき、最初に気になるのが「査定を頼むとお金がかかるのか」という点ではないでしょうか。調べ始めると「無料」という言葉をよく目にする一方で、「費用がかかる」という情報も出てきて、どちらが正しいのか判断しにくいと感じる方も多いようです。
結論から言うと、不動産会社が行う査定は基本的に無料で依頼できます。ただし、査定の種類や目的によっては費用が発生するケースもあります。この記事では、査定の種類ごとの費用の考え方、売却時にかかる費用の全体像、そして費用に関してよく誤解されているポイントを整理します。
なお、物件の種別・立地・売却の目的によって状況は大きく異なります。ここで紹介する内容はあくまで一般的な考え方の整理であり、個別の判断には専門家への確認が必要です。
査定の種類と費用の関係
不動産の「査定」と一口に言っても、大きく分けて2種類あります。不動産会社が行う査定と、不動産鑑定士が行う鑑定評価です。この2つは目的も費用も異なります。
不動産会社による査定(机上査定・訪問査定)
不動産会社が行う査定は、売却活動の前提として「この物件はいくらで売れそうか」を見積もるものです。机上査定と訪問査定の2種類があり、いずれも基本的に費用はかかりません。
| 査定の種類 | 方法 | 精度 | 所要時間 | 費用 |
|---|---|---|---|---|
| 机上査定(簡易査定) | 物件情報と周辺の取引事例をもとに算出 | やや低め | 数時間〜翌日程度 | 無料 |
| 訪問査定(詳細査定) | 担当者が実際に物件を確認して算出 | 比較的高め | 1〜2週間程度 | 無料 |
机上査定は、物件の住所や面積・築年数などの基本情報と、周辺の類似物件の取引事例を組み合わせて価格を算出します。実際に物件を確認するわけではないため、精度はやや低くなりますが、複数の不動産会社の見立てを手軽に比較したい段階では有用です。
訪問査定は、担当者が実際に物件を訪問し、内装・設備・日当たり・周辺環境なども含めて確認したうえで価格を算出します。机上査定より精度が高く、売却を具体的に検討している段階では詳細な情報が得られます。
ただし、査定価格はあくまで不動産会社の見積もりであり、その価格で売れることを保証するものではありません。実際の売却価格は、市場の状況や買い手との交渉によって変わります。
不動産鑑定士による鑑定評価(有料)
不動産鑑定士が行う「不動産鑑定評価」は、不動産鑑定士法に基づき有資格者のみが実施できる公的な評価です。不動産会社の査定とは異なり、法的効力を持つ書類として扱われます。
費用の目安は数万円〜数十万円程度と幅があり、物件の種別・規模・評価の複雑さによって異なります。また、評価書の取得には一般的に数週間程度の期間がかかります。
鑑定評価書が必要になるのは、主に以下のようなケースです。
- 相続税の申告で不動産の評価額が争点になる場合
- 離婚時の財産分与で不動産の価値を証明する必要がある場合
- 金融機関の融資審査で公的な評価書を求められる場合
- 裁判・調停で不動産の価値を客観的に示す必要がある場合
売却目的で価格の目安を知りたいだけであれば、不動産会社の無料査定で十分なケースがほとんどです。鑑定評価書は、公的手続きや法的手続きに使う必要がある場合に検討するものと理解しておくとよいでしょう。
不動産売却にかかる費用の全体像

査定自体は無料でも、実際に不動産を売却する際にはさまざまな費用が発生します。売却を検討する段階で、費用の全体像をあらかじめ把握しておくことが重要です。
主な費用項目の一覧
| 費用項目 | 概算(目安) | 発生条件 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売買価格×3%+6万円+消費税(上限) | 仲介で売却した場合 |
| 印紙税 | 1,000円〜60,000円程度(契約金額による) | 売買契約書の作成時 |
| 抵当権抹消登記費用 | 1〜3万円程度(司法書士報酬含む) | 住宅ローンが残っている場合 |
| 住宅ローン一括返済手数料 | 0〜33,000円程度(金融機関による) | 住宅ローンを完済する場合 |
| ハウスクリーニング費用 | 3〜15万円程度(物件規模による) | 任意(売却前に実施する場合) |
| 譲渡所得税 | 売却益×20.315%または39.63%(所有期間による) | 売却益が出た場合 |
仲介手数料の計算方法
売却費用の中で最も大きな割合を占めるのが仲介手数料です。宅地建物取引業法により上限が定められており、売買価格が400万円を超える場合の上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」です。
重要なのは、これはあくまで「上限」であるという点です。法定上限を超えることはできませんが、交渉によって下回る場合もあります。
以下は売却価格帯別の仲介手数料上限の目安です。
| 売却価格(目安) | 仲介手数料の上限(税込) |
|---|---|
| 2,000万円 | 約72.6万円 |
| 3,000万円 | 約105.6万円 |
| 4,000万円 | 約138.6万円 |
| 5,000万円 | 約171.6万円 |
上記はあくまで上限の目安であり、実際の金額は売買価格や条件によって異なります。
印紙税の目安
売買契約書には収入印紙を貼付する必要があります。金額は契約書に記載された売買価格によって異なります。
| 売買価格 | 印紙税額(本則) |
|---|---|
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 10,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 30,000円 |
| 1億円超〜5億円以下 | 60,000円 |
なお、印紙税には軽減措置が設けられている場合があります。最新の税率は国税庁のウェブサイトや税務署でご確認ください。
譲渡所得税の基本的な考え方
不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、税金が発生します。計算式は以下のとおりです。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって異なります。
- 所有期間が5年以下(短期譲渡所得):39.63%(所得税30.63%+住民税9%)
- 所有期間が5年超(長期譲渡所得):20.315%(所得税15.315%+住民税5%)
また、マイホームの売却で利益が出た場合には「3,000万円特別控除」を利用できる可能性があります。主な適用条件は、居住用財産(マイホーム)であること、売却先が親族等の特殊関係者でないこと、前年・前々年にこの特例を受けていないことなどです。ただし適用条件には細かな要件があるため、具体的な手続きは税務署や税理士に確認することが重要です。
税金に関しては個別の状況によって大きく異なるため、この記事では概要の紹介にとどめます。
売却の流れとスケジュールの手順
不動産売却は複数のステップを経て完了します。費用がどの段階で発生するかを把握しておくと、資金計画を立てやすくなります。
仲介での売却期間は一般的に3〜6ヶ月程度とされていますが、物件の立地・築年数・価格設定・市場動向によって大きく変動します。特に売り出し価格が相場より高い場合や、需要の少ないエリアでは、それ以上の期間がかかることもあります。余裕を持ったスケジュールで進めることが現実的です。
媒介契約の種類と費用への影響

不動産会社と結ぶ媒介契約には3種類あり、それぞれの特徴が売却活動の進め方に影響します。費用の観点でも違いを理解しておく価値があります。
| 契約の種類 | 依頼できる会社数 | 自己発見取引 | 活動報告義務 | レインズ登録 |
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみ | 不可 | 1週間に1回以上 | 5営業日以内 |
| 専任媒介 | 1社のみ | 可 | 2週間に1回以上 | 7営業日以内 |
| 一般媒介 | 複数社に依頼可 | 可 | 義務なし | 任意 |
契約期間はいずれも最長3ヶ月で、更新が可能です。仲介手数料の上限は契約の種類によって変わるわけではなく、いずれも法定上限の範囲内です。
専任媒介・専属専任媒介は1社に集中して依頼するため、担当者が積極的に動く傾向があります。一般媒介は複数社に依頼できるため、競争原理が働く可能性がある一方、各社の動きが分散しやすいという側面もあります。どちらが適しているかは、物件の特性や売主の状況によって異なります。
仲介と買取の費用比較
不動産の売却方法には、不動産会社が買い手を探す「仲介」と、不動産会社が直接購入する「買取」があります。費用構造が大きく異なるため、両者の違いを整理しておくことが重要です。
| 比較項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却価格の目安 | 市場価格に近い水準 | 市場価格の70〜80%程度 |
| 売却期間 | 3〜6ヶ月程度 | 最短1〜4週間程度 |
| 仲介手数料 | 発生する(上限:売買価格×3%+6万円+消費税) | 原則不要 |
| 内覧対応 | 複数回必要な場合がある | 基本的に不要 |
| 契約不適合責任 | 売主が負う(一定期間) | 免責になることが多い |
買取は仲介手数料がかからない一方、売却価格が市場価格より低くなる傾向があります。どちらが手取り額として有利かは、物件の価格帯・状態・売却を急ぐ事情の有無によって変わります。一概にどちらが良いとは言えず、状況に応じた判断が必要です。
費用に関するよくある誤解と注意点

不動産査定や売却費用に関しては、誤解されやすいポイントがいくつかあります。判断を誤らないために、代表的な誤解を整理しておきます。
誤解①「査定価格が高い会社=信頼できる会社」ではない
複数の不動産会社に査定を依頼すると、会社によって提示される価格が異なることがあります。このとき「査定価格が高い会社に依頼すれば高く売れる」と考えるのは早計です。
査定価格は「この価格で売れるだろう」という予測であり、保証ではありません。中には媒介契約を取るために意図的に高い価格を提示し、契約後に値下げを求める「高預かり」と呼ばれる慣行が存在することも知られています。査定価格の根拠(どの取引事例をもとに算出したか、周辺相場とどう比較しているか)を確認することが重要です。
誤解②「仲介手数料は多くの場合3%+6万円+消費税かかる」ではない
仲介手数料の「売買価格×3%+6万円+消費税」は法定の上限であり、これを超えることはできませんが、下回ることは可能です。交渉によって手数料が減額される場合もあります。ただし、手数料の引き下げが売却活動の優先度に影響する可能性もあるため、単純に安いほど良いとも言い切れません。
誤解③「査定は1社に頼めば十分」ではない
査定価格は不動産会社によって異なります。1社だけの査定では、その価格が相場に対して高いのか低いのかを判断する基準がありません。複数社の査定を比較することで、価格の幅と根拠を把握しやすくなります。ただし、多くの会社に依頼しすぎると連絡対応が煩雑になるという側面もあります。
具体的なシナリオで考える費用の判断
シナリオA:築20年のマンションを仲介で売却する場合
都市部の駅から徒歩10分以内に立地する築20年・専有面積70㎡のマンションを、住み替えのために売却するケースを考えてみます。
周辺の取引事例から机上査定では3,000万〜3,500万円の幅が示され、訪問査定後に3,200万円という価格で売り出すことになったとします。この場合の費用概算は以下のとおりです。
- 仲介手数料(上限):3,200万円×3%+6万円+消費税=約105.6万円
- 印紙税:1万円程度
- 抵当権抹消登記費用:1〜2万円程度
- 住宅ローン一括返済手数料:金融機関による
売却価格が3,200万円であっても、手取り額は諸費用を差し引いた金額になります。さらに取得費より売却価格が高ければ譲渡所得税が発生する可能性があります。この物件を5年超保有していた場合の税率は20.315%ですが、居住用財産であれば3,000万円特別控除の適用を検討できます。
売り出しから成約までの期間は、立地条件が良ければ3〜4ヶ月程度で進む可能性もありますが、価格設定や市場動向によっては6ヶ月以上かかることもあります。内覧対応や書類準備のスケジュールを考慮した計画が必要です。
シナリオB:相続した地方の一戸建てを現状のまま売却する場合
地方都市に立地する築35年・土地100㎡・建物80㎡の一戸建てを相続し、居住予定がないため売却を検討するケースを考えます。
このような物件では、仲介で売り出しても買い手が見つかるまでに時間がかかる可能性があります。仮に1,200万円で売却できた場合の仲介手数料上限は約45.6万円(税込)ですが、売却価格が低いため手取り額への影響は相対的に大きくなります。
一方、買取を選択した場合、売却価格は市場価格の70〜80%程度になる傾向があります。1,200万円が市場価格であれば、買取価格は840〜960万円程度が目安です。ただし仲介手数料は不要で、売却期間も大幅に短縮できます。また、相続した物件の場合、契約不適合責任の範囲が不明確なことも多く、買取によってその責任を免れる点を評価するケースもあります。
相続税の申告との兼ね合いや、複数の相続人がいる場合の合意形成など、費用以外の要素も判断に影響します。状況が複雑な場合は、税理士や弁護士への相談も視野に入れることが現実的です。
査定を複数社に依頼する際の考え方

複数の不動産会社に査定を依頼することは、価格の幅を把握するうえで有効な方法です。机上査定であれば一括査定サービスを利用することで、複数社の見立てを同時に確認できます。
ただし、一括査定サービスを利用する際にはいくつかの点を理解しておく必要があります。
- 査定依頼後に複数の不動産会社から連絡が来る場合がある
- 机上査定の価格は実際の売却価格とは異なる(あくまで概算)
- 査定価格の根拠を各社に確認することが重要
- 価格が高い会社が必ずしも売却実績や対応力に優れているとは限らない
査定を比較する目的は「高い価格を提示した会社を選ぶ」ことではなく、「価格の根拠と市場での立ち位置を把握する」ことにあります。各社の説明内容や対応の丁寧さも、総合的な判断材料になります。
売却費用を事前に把握するための考え方
売却にかかる費用は、売却価格・物件の状況・売却方法によって変わります。事前に大まかな費用感を把握しておくことで、資金計画の精度が上がります。
費用を整理する際には、以下の観点で考えると整理しやすくなります。
- 多くの場合発生する費用:印紙税、仲介手数料(仲介の場合)
- 条件によって発生する費用:抵当権抹消費用(ローン残債がある場合)、譲渡所得税(売却益が出た場合)
- 任意で発生する費用:ハウスクリーニング、リフォーム、引越し費用
売却価格から費用を差し引いた「手取り額」を意識することが、資金計画の出発点になります。特に住み替えを検討している場合、次の物件の購入資金との兼ね合いで手取り額の見通しが重要になります。
まとめ:不動産査定の費用と売却費用の基本を整理する

この記事で整理した主なポイントは以下のとおりです。
- 不動産会社による査定(机上査定・訪問査定)は基本的に無料
- 不動産鑑定士による鑑定評価は有料(数万円〜数十万円程度)で、公的手続きや法的手続きに必要なケースで利用する
- 売却時の主な費用は、仲介手数料・印紙税・登記費用・譲渡所得税など
- 仲介手数料の上限は「売買価格×3%+6万円+消費税」だが、あくまで上限
- 査定価格は売却価格の保証ではなく、複数社の価格と根拠を比較することが重要
- 仲介と買取では費用構造と売却期間が大きく異なり、どちらが適切かは状況次第
物件や状況によって考え方は変わります。ここで紹介した内容はあくまで一般的な考え方の整理であり、個別の物件や状況により判断は異なります。税金や法的な手続きについては、税務署・税理士・司法書士など専門家への確認を合わせて行うことをお勧めします。
より具体的な比較検討の方法は、別の記事で詳しく解説しています。