- 「空き家」と一口に言っても、実は複数の種類がある
- 住宅土地統計調査とは何か:調査の仕組みと目的
- 住宅土地統計調査における空き家の定義と4つの分類
「空き家」と一口に言っても、実は複数の種類がある

空き家問題が社会的な話題になる中で、「空き家」という言葉を耳にする機会は増えています。しかし、統計や行政の文書で使われる「空き家」は、日常会話で使う「誰も住んでいない家」とは少し意味が異なります。住宅土地統計調査における空き家の定義を正確に理解しておくと、ニュースや行政情報の読み方が変わり、自分の物件を客観的に位置づける際にも役立ちます。
この記事では、住宅土地統計調査が定める空き家の定義と分類、最新の調査結果、そして空き家を所有している場合に知っておきたい基礎知識を整理します。「空き家を相続した」「親の実家が空き家になりそう」「自分の物件が空き家に該当するか確認したい」という方にとって、判断の入口となる情報を提供します。
なお、個別の物件や状況により判断は異なります。具体的な対応については、専門家や行政窓口への確認をあわせてご検討ください。
住宅土地統計調査とは何か:調査の仕組みと目的
住宅土地統計調査は、日本の住宅事情を把握するために国が実施する大規模な統計調査です。この調査が空き家問題を論じる際の基礎データとなっています。
調査は総務省統計局が主体となり、全国の住宅および住宅に居住する世帯の実態を明らかにすることを目的としています。具体的には、住宅の数・種類・建て方・建築時期・設備の状況・居住者の属性などを幅広く調査します。
調査の実施周期は5年ごとで、直近では2023年(令和5年)に実施されています。調査対象は全国の住宅を対象とした標本調査であり、調査員が実際に対象地域を巡回して調査票を配布・回収する方式が中心です。
この調査の結果は、住宅政策の立案・空き家対策の検討・都市計画の基礎資料として広く活用されています。「空き家が何万戸」という数字を見かけた場合、多くはこの調査に基づいています。
調査における「住宅」の定義
住宅土地統計調査では、「住宅」を「一つの世帯が独立して家庭生活を営むことができるように建築または改造された建物または建物の一部」と定義しています。この定義の中に、現在人が住んでいない状態の建物も含まれており、それが「空き家」として分類されます。
住宅土地統計調査における空き家の定義と4つの分類

住宅土地統計調査では、空き家を「居住世帯のない住宅」と定義し、さらに4つの種類に分類しています。この分類を理解することが、空き家問題を正確に把握する第一歩です。
| 種類 | 定義・特徴 | 具体例 |
|---|---|---|
| 二次的住宅 | 別荘や週末住宅など、普段は人が住んでいないが時々利用される住宅 | 山荘、海辺の別荘、週末に使う実家 |
| 賃貸用の住宅 | 賃貸のために空き家になっている住宅(入居者募集中を含む) | 空室のアパート、募集中のマンション |
| 売却用の住宅 | 売却のために空き家になっている住宅 | 売り出し中の中古一戸建て、中古マンション |
| その他の住宅 | 上記3種類に当てはまらない空き家。長期にわたって不在の住宅や、取り壊し予定の住宅など | 相続後に放置された実家、長期間使われていない住宅 |
「その他の住宅」が社会問題として注目される理由
4つの分類のうち、社会的な問題として特に注目されているのが「その他の住宅」です。賃貸用・売却用・二次的住宅は、何らかの形で利用される見込みのある空き家ですが、「その他の住宅」は管理や活用の見通しが立っていない状態のものが多く含まれます。
老朽化が進んだ建物、相続後に手続きが放置されたもの、住んでいた方が施設に入居して戻る見込みがないものなど、さまざまなケースが「その他の住宅」に分類されます。この種類の空き家は、近隣への影響(景観悪化・防犯・衛生)が問題になりやすく、後述する「特定空き家」の指定対象にもなり得ます。
最新の調査結果:空き家数と空き家率の現状
住宅土地統計調査の最新データによると、全国の空き家数は約900万戸に達し、空き家率は約13.8%となっています。これは住宅全体のおよそ7戸に1戸が空き家であることを意味します。
種類別の内訳
空き家全体の内訳を見ると、賃貸用の住宅が最も多く、全体の約半数以上を占めています。その他の住宅も増加傾向にあり、社会的な問題として対策が急がれています。
| 空き家の種類 | 戸数(概数) | 特徴 |
|---|---|---|
| 賃貸用の住宅 | 約430万戸 | 空室状態のアパート・マンション等 |
| その他の住宅 | 約385万戸 | 管理・活用の見込みが不明確なもの |
| 二次的住宅 | 約51万戸 | 別荘・週末住宅等 |
| 売却用の住宅 | 約29万戸 | 売り出し中・売却予定のもの |
※上記の数値は住宅土地統計調査に基づく概数です。調査年次や集計方法により数値が異なる場合があります。
地域による空き家率の差
空き家率は全国一律ではなく、地域によって大きな差があります。都市部への人口集中が続く一方、地方では人口減少に伴い空き家率が高くなる傾向があります。
空き家率が高い都道府県としては、山梨県・和歌山県・長野県・徳島県などが上位に挙げられることが多く、これらの地域では20%を超える空き家率が報告されています。一方、東京都・沖縄県・神奈川県などは相対的に空き家率が低い傾向にあります。
この地域差は、空き家物件の売却や活用を検討する際に重要な視点となります。同じ「空き家」でも、都市部の物件と地方の物件では市場での需要や売却のしやすさが大きく異なります。
空き家対策特別措置法における「特定空き家」とは

住宅土地統計調査の「その他の住宅」に分類される空き家の中でも、特に問題が深刻なものについては、法律上の対応が定められています。
2015年に施行された空き家対策特別措置法(空家等対策の推進に関する特別措置法)では、「特定空き家」という概念が定められています[1]。特定空き家とは、以下のいずれかに該当する状態にある空き家を指します[1]。
- そのまま放置すれば倒壊等、著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態
特定空き家に指定されると、市区町村から所有者に対して助言・指導・勧告・命令が行われる場合があります。さらに命令に従わない場合は行政代執行(強制的な解体・撤去)の対象となる可能性もあります。
2023年改正で加わった「管理不全空き家」の概念
2023年の法改正により、「管理不全空き家」という新たな概念が追加されました。特定空き家の指定には至らないものの、このまま放置すれば特定空き家になるおそれのある状態のものが対象となります。管理不全空き家に対しても、市区町村から指導・勧告が行われる場合があり、勧告を受けると固定資産税の住宅用地特例(課税標準が6分の1になる軽減措置)が適用されなくなる可能性があります。
この点は、空き家を所有している方にとって見逃せないポイントです。適切な管理や早期の対応が、税負担の観点からも重要になっています。
空き家の売却を考える前に知っておきたい基礎知識
空き家の定義や現状を理解した上で、「では自分の空き家をどうするか」という段階に進む方も多いでしょう。ここでは、空き家の売却に関する基礎的な考え方を整理します。
仲介と買取:2つの売却方法の基本的な違い
| 項目 | 仲介 | 買取 |
|---|---|---|
| 売却先 | 不動産会社が買主を探す | 不動産会社が直接購入 |
| 売却価格 | 市場価格に近い金額を期待できる | 市場価格の70〜80%程度が目安 |
| 売却期間 | 3〜6ヶ月程度(物件・条件により変動) | 最短1〜4週間程度 |
| 仲介手数料 | 発生する(売買価格×3%+6万円+消費税が上限) | 原則不要 |
| 契約不適合責任 | 売主が負う(免責特約の交渉が必要) | 免責になることが多い |
| 内覧対応 | 必要 | 不要 |
どちらの方法が合っているかは、「早期に売却したい」「できるだけ高く売りたい」「建物の状態に不安がある」「遠方に住んでいて管理が難しい」など、状況によって異なります。どちらが優れているという一律の答えはなく、それぞれのトレードオフを理解した上で判断することが重要です。
売却にかかる主な費用
空き家を仲介で売却する場合、以下の費用が発生します。事前に概算を把握しておくことで、手取り額のイメージが持てます。
- 仲介手数料:売買価格×3%+6万円+消費税(400万円超の場合の法定上限)
- 印紙税:売買契約書に貼付。売買価格により1,000円〜60,000円程度
- 抵当権抹消費用:住宅ローンが残っている場合。登録免許税+司法書士報酬で1〜3万円程度
- 住宅ローン一括返済手数料:金融機関により0〜33,000円程度
- ハウスクリーニング・解体費用:任意または状況に応じて発生
仲介手数料の「売買価格×3%+6万円+消費税」はあくまで法定上限です。実際の金額は売買価格によって変わります。
| 売買価格 | 仲介手数料の上限(税抜) | 仲介手数料の上限(税込・消費税10%) |
|---|---|---|
| 1,000万円 | 36万円 | 39.6万円 |
| 2,000万円 | 66万円 | 72.6万円 |
| 3,000万円 | 96万円 | 105.6万円 |
| 5,000万円 | 156万円 | 171.6万円 |
※上記は速算式(売買価格×3%+6万円)による計算です。実際の金額は不動産会社との契約内容によります。
売却時の税金:譲渡所得の基本的な考え方

空き家を売却して利益(売却益)が出た場合、譲渡所得税が発生する場合があります。税額の計算や適用条件は複雑であるため、ここでは基本的な仕組みの紹介にとどめます。具体的な税額については、税務署や税理士への確認をおすすめします。
譲渡所得の計算式
譲渡所得は以下の式で計算します。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費は物件の購入価格や購入時の諸費用、譲渡費用は仲介手数料などの売却に要した費用です。取得費が不明な場合は、売却価格の5%を概算取得費として使用することが認められています。
所有期間による税率の違い
譲渡所得に対する税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって異なります。
| 区分 | 所有期間 | 税率(復興特別所得税含む) |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税30.63%+住民税9%) |
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) |
所有期間の判定は「実際の取得日からの年数」ではなく、「売却した年の1月1日時点での所有期間」で行われる点に注意が必要です。
居住用財産の3,000万円特別控除
マイホームとして使用していた住宅を売却する場合、一定の条件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度があります。主な適用条件は以下のとおりです。
- 居住用財産(マイホーム)であること
- 売却先が親族等の特殊関係者でないこと
- 前年・前々年にこの特例を受けていないこと
ただし、長期間空き家になっていた物件がこの控除の対象になるかどうかは、居住の実態や空き家期間の長さによって判断が異なります。適用可否については税務署や税理士への確認が不可欠です。
また、相続した空き家については「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(空き家特例)という別の制度もあります。こちらも適用条件が細かく定められているため、専門家への相談が重要です。
具体的なシナリオで考える:空き家の状況別の判断の分かれ方
空き家の定義や制度を理解した上で、実際にどのような判断が考えられるかを、具体的なシナリオで整理します。
シナリオ1:地方の実家を相続したケース
地方の中小都市に築40年の一戸建てがあり、親が亡くなって相続した。相続人は都市部に住んでおり、自分で使う予定はない。建物は老朽化が進んでいるが、取り壊しまでは至っていない。
このケースでは、住宅土地統計調査の分類でいえば「その他の住宅」に近い状態です。管理を放置すると「管理不全空き家」や「特定空き家」に指定されるリスクが高まり、固定資産税の軽減措置が受けられなくなる可能性もあります。
選択肢としては、仲介で売却する・買取に出す・解体して土地として売却する・空き家バンクに登録して活用を図る、などが考えられます。地方の物件は仲介での買い手が見つかりにくい場合もあり、3〜6ヶ月以上の期間がかかることも珍しくありません。一方、買取であれば1〜4週間程度で完了する代わりに、手取り額は市場価格の70〜80%程度になる傾向があります。
「早く手放したい」「管理の負担を解消したい」という優先度が高い場合は買取が選択肢に入りやすく、「できるだけ高く売りたい」「時間に余裕がある」場合は仲介が選択肢として考えられます。どちらが合理的かは、物件の状態・立地・相続人の状況によって変わります。
シナリオ2:都市部の空き家を売却用として市場に出しているケース
都市部の築20年のマンションが、転勤を機に空き家になった。賃貸に出すことも検討したが、管理の手間を考えて売却を選んだ。現在は不動産会社に媒介契約を結んで売り出し中であり、住宅土地統計調査の分類では「売却用の住宅」に該当します。
このケースでは、媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)の選択が重要な判断ポイントになります。
| 媒介契約の種類 | 依頼できる会社数 | 自己発見取引 | レインズ登録義務 | 報告義務 |
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみ | 不可 | 5営業日以内 | 1週間に1回以上 |
| 専任媒介 | 1社のみ | 可 | 7営業日以内 | 2週間に1回以上 |
| 一般媒介 | 複数社可 | 可 | 義務なし(任意) | 義務なし |
1社に絞ることで手厚いサポートが期待できる反面、複数社に依頼することで競争原理が働く可能性もあります。物件の特性や売主の状況によって、どの契約形態が合っているかは異なります。いずれの契約期間も最長3ヶ月(更新可)です。
都市部のマンションであれば需要が比較的高く、適切な価格設定であれば3〜6ヶ月以内に成約に至ることも多いですが、価格設定が相場から大きく外れている場合は長期化するケースもあります。
- 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
- 税制や法律は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。
売却の流れ:空き家を売却する際の一般的な手順

全体のスケジュールは、物件の立地・種類・価格帯・市場状況により大きく変動します。一般的には売り出しから成約まで3〜6ヶ月程度が目安とされていますが、物件によってはこれより短くなる場合も長くなる場合もあります。余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
査定の種類と注意点
査定には大きく2種類があります。
- 机上査定(簡易査定):物件情報と周辺の取引事例から概算を算出。数時間〜翌日程度で結果が出る
- 訪問査定:不動産会社が実際に物件を確認して算出。1〜2週間程度かかることが多い
査定価格はあくまで「この価格で売れるだろう」という不動産会社の見積もりであり、実際に売れる価格の保証ではありません。複数社に査定を依頼して比較することで、価格の根拠や市場での位置づけを多角的に確認できます。
よくある勘違いと正しい理解
空き家の定義や売却に関して、誤解されやすいポイントを整理します。
勘違い1:「空き家=問題のある物件」ではない
住宅土地統計調査の定義では、賃貸募集中のアパートも、売り出し中のマンションも、週末に使う別荘も「空き家」に含まれます。「空き家=老朽化した危険な建物」というイメージは正確ではなく、社会問題として取り上げられるのは主に「その他の住宅」に分類される管理が行き届いていない物件です。
自分の物件が空き家に該当するかどうかを確認する際は、どの種類に当てはまるかを意識することが重要です。
勘違い2:査定価格が高い会社=良い会社とは限らない
複数社に査定を依頼したとき、会社によって査定価格に差が出ることは珍しくありません。査定価格が高いからといって、その会社が優れているわけではありません。極端に高い査定価格は、媒介契約を獲得するための「高預かり」(高い価格で預かった後に値下げを促す)の可能性も考えられます。
査定価格を比較する際は、金額だけでなく「なぜその価格なのか」という根拠の説明を確認することが重要です。
勘違い3:築年数が古い空き家は売れないとは限らない
築年数が古い物件でも、立地条件・土地の広さ・建物の状態・周辺の需要によっては、十分な需要がある場合があります。特に都市部では、古い建物を解体して土地として購入したいという需要も存在します。「古いから売れない」と決めつけず、実際の市場での位置づけを確認することが出発点になります。
勘違い4:空き家を放置しても固定資産税は変わらないと思っている
住宅が建っている土地は固定資産税の住宅用地特例が適用され、税額が軽減されています。しかし、特定空き家や管理不全空き家に指定されると、この特例が適用されなくなる可能性があります。その結果、固定資産税が最大で6倍程度になるケースも考えられます。空き家を長期間放置するリスクの一つとして、税負担の増加を把握しておくことが重要です。
まとめ:住宅土地統計調査における空き家の定義と売却の基礎知識

住宅土地統計調査では、空き家を「居住世帯のない住宅」と定義し、二次的住宅・賃貸用・売却用・その他の住宅の4種類に分類しています。全国の空き家数は約900万戸・空き家率は約13.8%に達しており、特に「その他の住宅」の増加が社会的な課題となっています。
空き家を所有している場合、管理状態によっては特定空き家や管理不全空き家に指定されるリスクがあり、固定資産税の軽減措置が受けられなくなる可能性もあります。売却を検討する際は、仲介と買取のトレードオフ・媒介契約の種類・発生する費用・税金の基本的な仕組みを理解した上で、自分の状況に合った方法を検討することが出発点になります。
ただし、物件や状況によって考え方は変わります。空き家の状態・立地・相続の有無・売却の優先事項(速度か価格か)によって、合理的な判断は異なります。一般論だけでは決めきれない部分もあります。
より具体的な比較検討の方法や、空き家売却の実際のプロセスについては、別の記事で詳しく解説しています。
※本記事の情報は一般的な内容を整理したものです。個別の物件や状況により判断は異なりますので、具体的な対応については不動産会社・税理士・行政窓口等の専門家にご確認ください。