- 売れない土地なのに税金だけ取られる——その違和感の正体
- 固定資産税の基本的な仕組み——なぜ「売れなくても」課税されるのか
- 売れない土地が生まれる主な理由
売れない土地なのに税金だけ取られる——その違和感の正体

「買い手がつかないのに、毎年固定資産税の請求が届く。これはおかしくないか」と感じている方は少なくありません。売れない土地に固定資産税がかかり続ける状況は、所有者にとって理不尽に映ることがあります。しかし、この感覚の背景には、固定資産税という制度の仕組みと、土地が売れない理由が複雑に絡み合っています。
この記事では、売れない土地に固定資産税が課される仕組み、税負担を軽減・解消するための選択肢、そして「どうしても手放せない」場合の考え方について、基礎から整理します。個別の物件や状況により判断は異なりますが、まず制度の全体像を把握することが、次のステップを考えるうえでの土台になります。
固定資産税の基本的な仕組み——なぜ「売れなくても」課税されるのか
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地・建物などの固定資産を所有している人に対して課される地方税です[1]。ここで重要なのは「所有しているだけで課税される」という点です。土地が活用されているかどうか、収益を生んでいるかどうか、売れる状態かどうかは、課税の要件に含まれません。
税率は固定資産税評価額(課税標準額)に対して標準税率1.4%が適用されます[1]。市区町村によっては条例で異なる税率を設定している場合もありますが、多くの自治体では1.4%が基本です。
たとえば、固定資産税評価額が500万円の土地であれば、年間の固定資産税は以下のように計算されます。
| 評価額(課税標準額) | 税率 | 年間税額の目安 |
|---|---|---|
| 100万円 | 1.4% | 約14,000円 |
| 300万円 | 1.4% | 約42,000円 |
| 500万円 | 1.4% | 約70,000円 |
| 1,000万円 | 1.4% | 約140,000円 |
なお、固定資産税には免税点が設けられており、同一市区町村内の土地の課税標準額の合計が30万円未満の場合は課税されません[1]。山間部や過疎地の小規模な土地では、この免税点を下回るケースもあります。ただし、免税点はあくまで「同一市区町村内の合計額」で判定されるため、複数の土地を所有している場合は注意が必要です。
固定資産税の納付は原則として年4回(4月・7月・12月・翌年2月が一般的)に分割して行います[1]。一括払いも可能で、その場合は納期前に支払うことになります。
「売れない土地」に固定資産税がかかることへの違和感はなぜ生まれるか
固定資産税は「資産を持っていること」に対する税であり、その資産が市場で流通しているかどうかとは切り離された制度設計になっています。つまり、買い手がつかない土地であっても、登記簿上の所有者である限り課税は続きます。
この仕組みが「おかしい」と感じられる背景には、いくつかの事情があります。まず、地方部や過疎地では土地の需要が低く、評価額に見合った市場価値がない場合があります。また、相続で取得した土地を「使うつもりがない」「売りたいが売れない」という状況で抱え続けているケースも増えています。収益を生まない資産に対して毎年コストが発生するという構造は、所有者にとって心理的・経済的な負担となります。
売れない土地が生まれる主な理由

固定資産税の問題を考えるうえで、まず「なぜその土地が売れないのか」を整理することが重要です。売れない理由によって、取りうる対策が変わってくるためです。
立地・形状・接道の問題
不動産の価値は立地条件に大きく左右されます。人口減少が進む地方では需要そのものが低く、価格をかなり下げても買い手が現れないことがあります。また、建築基準法上の接道要件(原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していること)を満たさない「再建築不可物件」は、住宅の建て替えができないため流通しにくい状況にあります。
土地の形状が不整形であったり、急傾斜地であったり、土壌汚染の懸念がある場合も、買い手の選択肢から外れやすくなります。
権利関係の複雑さ
共有名義の土地は、共有者全員の同意がなければ売却できません。相続によって複数の親族が共有者になっているケースでは、一人でも反対する人がいると売却が進みません。また、境界が未確定の土地は、買い手が安心して購入できないため、売却活動が停滞しやすくなります。
農地・山林・原野などの特殊な土地
農地は農地法による転用規制があり、農業委員会の許可なく宅地などに転用することができません。山林や原野は利用目的が限られるうえ、維持管理にもコストがかかるため、一般的な不動産市場では需要が非常に低い傾向があります。
売れない土地を抱えるケース——具体的なシナリオで考える
- シナリオ①:地方の農村部に相続した小規模農地
- シナリオ②:都市近郊の再建築不可物件
当てはまるほど、売却を具体的に検討するタイミングかもしれません。
シナリオ①:地方の農村部に相続した小規模農地
親が亡くなり、地方の農村部にある500平方メートルほどの農地を相続したケースを考えます。相続人は都市部に住んでおり、農業を継ぐ意思はありません。農地として売却しようとしても、近隣の農家も後継者不足で引き受け手がなく、宅地への転用も農業委員会の許可が必要で手続きが煩雑です。
この土地の固定資産税評価額が200万円程度であれば、年間の税負担は約28,000円ほどになります。「使わない土地のために毎年3万円近く払い続けるのか」という感覚は、多くの相続人が共通して抱える悩みです。
こうした状況では、まず農地の現況と転用可能性を確認し、地域の農業委員会や農地中間管理機構(農地バンク)への相談が選択肢の一つになります。農地バンクを通じた貸し付けや売却が成立すれば、固定資産税の負担を継続しながら土地を保有し続ける必要がなくなる可能性があります。ただし、農地バンクへの登録が多くの場合しも成立するとは限らず、地域の需給状況に依存します。
シナリオ②:都市近郊の再建築不可物件
都市近郊に位置するものの、幅員2mの私道にしか接していない再建築不可の土地を保有しているケースを考えます。立地自体は悪くないため固定資産税評価額は高めで、年間の税負担が10万円を超えることもあります。しかし、建て替えができないという制約から一般の購入希望者には敬遠され、通常の仲介では売却活動が長期化しやすい状況です。
このケースでは、隣地所有者への打診(隣地と合筆することで再建築可能になる場合がある)や、再建築不可物件を専門に扱う不動産会社への相談が考えられます。買取の場合、市場価格より大幅に低い金額になることが多いですが、長期間税負担を継続するコストと比較して判断することになります。
売れない土地の固定資産税負担を考えるうえでの選択肢

売れない土地の固定資産税問題に対するアプローチは、大きく「売却する」「活用する」「手放す(国・自治体・第三者へ)」「保有を継続する」の4方向に整理できます。それぞれにトレードオフがあり、どれが合理的かは物件の状況と所有者の事情によって異なります。
売却を試みる
仲介による売却では、不動産会社が買主を探します。市場価格に近い金額での売却を期待できる一方、売り出しから成約まで3〜6ヶ月程度かかることが一般的で、売れにくい土地では期間がさらに長くなる場合があります。
買取では不動産会社が直接購入します。価格は市場価格の70〜80%程度になることが多いですが、最短1〜4週間程度で手続きが完了する場合があります。売れにくい土地の場合、買取価格がさらに低くなる、あるいは買取自体を断られることもあります。
| 方法 | 期待できる価格 | 売却期間の目安 | 仲介手数料 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 仲介 | 市場価格に近い | 3〜6ヶ月以上 | 発生する(上限:売買価格×3%+6万円+消費税) | 買主探しに時間がかかるが手取り額は高め |
| 買取 | 市場価格の70〜80%程度 | 1〜4週間程度 | 原則不要 | 早期完了できるが手取り額は低め |
なお、仲介手数料は「売買価格×3%+6万円+消費税」が法定上限(売買価格400万円超の場合)です。これに加え、印紙税(契約金額により1,000〜60,000円程度)、境界確定費用(必要な場合)、抵当権抹消の登記費用(1〜3万円程度)なども発生する場合があります。
低未利用土地の譲渡に関する特別控除の活用可能性
低未利用土地の活用促進を目的として、一定の要件を満たす低未利用土地の譲渡については、長期譲渡所得から100万円を控除できる特例が設けられています[2]。主な適用条件は以下の通りです。
- 都市計画区域内にある土地(または土地と建物)であること
- 譲渡の年の1月1日において所有期間が5年を超えること
- 譲渡価格が500万円以下(土地と建物の合計)であること
- 譲渡後に買主が低未利用の状態を解消することが確認されること
- 市区町村長の確認書を取得していること
この特例は低価格帯の売れにくい土地の売却促進を意図した制度ですが、適用要件の詳細や手続きについては税務署または税理士への確認が必要です。
土地の活用を検討する
売却が難しい場合、土地を活用して収益を得ながら固定資産税を賄うという考え方もあります。駐車場としての貸し付け、資材置き場としての賃貸、太陽光発電設備の設置などが選択肢として挙げられます。ただし、需要の低いエリアでは活用自体が難しく、初期投資が回収できないリスクもあります。活用の可否は立地条件に大きく依存します。
相続土地国庫帰属制度の活用
2023年4月に施行された相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈によって取得した土地を、一定の要件を満たす場合に国(法務大臣)に引き取ってもらえる制度です[1]。売れない土地を抱える相続人にとって注目される制度ですが、いくつかの重要な要件と費用があります。
申請できない土地の例(承認が受けられない主なケース)は以下の通りです。
- 建物が存在する土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 通路など他人が利用している土地
- 土壌汚染がある土地
- 境界が明らかでない土地
- 崖がある等、管理に過分な費用・労力がかかる土地
申請にあたっては、審査手数料(1筆あたり1万4,000円)と、承認された場合の負担金が必要です。負担金は原則として10年分の土地管理費相当額とされており、宅地の場合は面積によって異なりますが、標準的な宅地(200平方メートル以下)では20万円が目安とされています[1]。山林の場合は面積に応じた計算式が適用され、広い山林では負担金が高額になる場合があります。
この制度は「無償で国に渡せる」ものではなく、要件確認・手続き・費用負担が伴います。また、承認されない土地も多いため、まず法務局への事前相談で要件を確認することが出発点になります。
自治体や地域団体への寄付・譲渡を検討する
市区町村への寄付は、自治体側が受け入れを判断するため、多くの場合しも受け取ってもらえるわけではありません。公共的な活用の見込みがある土地(公園用地、道路用地など)であれば受け入れられる可能性がありますが、需要の低いエリアの土地は断られるケースが多いのが実情です。
売却した場合の税金の考え方
土地が売却できた場合、売却益(譲渡所得)が生じると税金がかかります。基本的な計算式は以下の通りです。
譲渡所得 = 売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)
取得費とは土地を購入した際の費用(購入価格+購入時の諸費用)、譲渡費用とは売却に要した費用(仲介手数料、測量費など)を指します。なお、取得費が不明な場合は売却価格の5%を取得費とみなす概算取得費を使用できますが、実際の取得費が判明している場合はそちらを用いるほうが税負担が低くなることが多いです。
税率は所有期間によって異なります。
| 所有期間の区分 | 判定基準 | 税率(復興特別所得税含む) |
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で所有期間5年以下 | 39.63%(所得税30.63% + 住民税9%) |
| 長期譲渡所得 | 売却した年の1月1日時点で所有期間5年超 | 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%) |
所有期間の判定は「売却した年の1月1日時点」で行われる点に注意が必要です。実際の取得日から5年を超えていても、1月1日時点で5年以下であれば短期扱いになります。
居住用財産(マイホーム)の売却であれば、一定の要件を満たす場合に3,000万円の特別控除が利用できる場合があります。ただし、売れない土地の多くは居住用財産ではないため、この特例が適用されないケースが多いです。具体的な税額計算や適用可能な特例については、税務署または税理士への確認が必要です。
売れない土地の固定資産税に関するよくある誤解

誤解①「評価額が低ければ税金もほぼゼロのはず」
固定資産税の免税点(土地は30万円未満)を下回る場合は確かに課税されませんが、農村部や地方の土地でも評価額が30万円を超えるケースは少なくありません。また、固定資産税評価額と実際の売却可能な市場価格は別物です。市場でほぼ値がつかない土地でも、評価額が一定以上あれば課税は続きます。
誤解②「相続放棄すれば固定資産税の義務もなくなる」
相続放棄は家庭裁判所への申述が必要で、相続開始を知った日から原則3ヶ月以内に行う必要があります。相続放棄が認められれば、その土地の所有権を引き継がないことになりますが、放棄した財産は相続財産管理人(清算人)が選任されるまでの間、放棄した相続人が「現に占有している場合」は保存義務を負う場合があります。また、相続放棄は土地だけを選んで放棄することはできず、すべての財産を放棄することになります。相続放棄の判断は法律的な影響が大きいため、弁護士や司法書士への相談が必要です。
誤解③「固定資産税を滞納し続けても大きな問題はない」
固定資産税を滞納すると、延滞金が加算されるだけでなく、最終的には差押えや公売(強制的な競売)の対象になる可能性があります。売れない土地であっても、滞納を放置することは問題の解決にならず、むしろ状況を悪化させます。支払いが困難な場合は、自治体の税務担当窓口に分割納付の相談をすることが現実的な対応の一つです。
- 売却価格は物件の立地・状態・市況で大きく変わります。
- 税制や法律は変更される可能性があります。
- 具体的な判断は不動産会社や専門家への確認が前提です。
売れない土地の固定資産税問題への対処の流れ
問題を整理して対処を進めるための基本的な手順は以下の通りです。
売却費用のシミュレーション——土地の価格帯別の目安

仮に売却が成立した場合の費用概算を確認しておくことは、判断の材料になります。以下は売却価格帯別の主な費用の目安です(実際の金額は個別条件により異なります)。
| 売却価格の目安 | 仲介手数料上限(税込) | 印紙税の目安 | 合計費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 100万円 | 約55,000円 | 1,000円 | 約56,000円〜 |
| 300万円 | 約154,000円 | 2,000円 | 約156,000円〜 |
| 500万円 | 約231,000円 | 2,000円 | 約233,000円〜 |
| 1,000万円 | 約396,000円 | 10,000円 | 約406,000円〜 |
仲介手数料は「売買価格×3%+6万円+消費税」が法定上限です。これは上限であり、交渉によって下がる場合もあります。また、境界確定測量が必要な場合は別途数十万円の費用が発生することがあります。登記費用(抵当権抹消等)が必要な場合は1〜3万円程度が目安です。
媒介契約の種類と売れにくい土地への適用の考え方
土地の売却を不動産会社に依頼する際には、媒介契約の種類を選択します。売れにくい土地の場合、どの契約形態が合うかは状況によって異なります。
| 契約の種類 | 依頼できる会社数 | 自己発見取引 | 活動報告義務 | レインズ登録 |
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみ | 不可 | 1週間に1回以上 | 5営業日以内 |
| 専任媒介 | 1社のみ | 可 | 2週間に1回以上 | 7営業日以内 |
| 一般媒介 | 複数社 | 可 | 義務なし | 任意 |
いずれの契約も最長3ヶ月で、更新が可能です。売れにくい土地では、専任媒介で1社に手厚く動いてもらうか、一般媒介で複数社に広く情報を流すか、それぞれの判断があります。専任媒介は担当会社が積極的に動く動機が生まれやすい一方、一般媒介は複数社が競合して情報拡散が期待できます。どちらが合理的かは物件の特性と担当会社の方針によって変わります。
まとめ——売れない土地の固定資産税問題を整理するための視点

売れない土地に固定資産税がかかり続ける仕組みは、「所有しているだけで課税される」という制度設計によるものです。この税負担を解消するための選択肢として、売却(仲介・買取)、土地の活用、相続土地国庫帰属制度の活用、自治体への寄付などが考えられますが、いずれも要件・費用・期間のトレードオフがあります。
この記事で確認した主な内容を整理します。
- 固定資産税は標準税率1.4%で、土地の活用状況や市場での売れやすさに関わらず課税される
- 免税点(評価額30万円未満)を下回る場合は課税されないが、多くの土地は対象となる
- 相続土地国庫帰属制度は要件が厳しく、負担金も発生するため「無償で手放せる」ものではない
- 売却できた場合の譲渡所得税は、所有期間5年超で20.315%、5年以下で39.63%が目安
- 低未利用土地の譲渡には100万円の特別控除が適用できる場合がある
物件や状況によって考え方は変わります。「売れない」と思っていた土地でも、価格設定や売却先の変更、専門家への相談によって状況が変わることがあります。一方で、どうしても手放せない土地については、固定資産税の滞納を避けつつ、国庫帰属制度や自治体への相談を検討することが現実的なアプローチです。
より具体的な比較検討の方法や、個別の物件状況に応じた売却の進め方については、別の記事で詳しく解説しています。
※本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の物件や状況により判断は異なります。税務・法律に関する具体的な判断は、税理士・司法書士・弁護士等の専門家にご確認ください。